JOLED、印刷方式有機EL量産に向け470億円調達 ライセンス収入も狙いか

2018年8月24日 19:14

印刷

 JOLEDは23日、印刷方式による有機ELディスプレイ量産のため、デンソー、豊田通商、住友化学、SCREENファインテックソリューションズを引受先とする第三者割当増資により、総額470億円の資金調達を実施。同日、パナソニック プロダクションエンジニアリングおよびSCREENファインテックソリューションズと共同で、テレビ向けの大型有機ELディスプレイ製造設備の販売・サービスに関する業務提携契約を締結したと発表した。

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 世界初の印刷方式有機ELディスプレイ量産ラインを、ジャパンディスプレイ(JDI)との協力関係のもと、2020年より稼働させる。この狙いは2つあるようだ。一つは、印刷方式の量産ラインの構築。そして、もう一つは量産技術のライセンスだ。印刷方式は大型化に向く。大型テレビ向け有機ELディスプレイ製造を目指すメーカーに向けて、印刷方式の製造技術を提供する「技術ライセンス」を推進するという。

 有機ELの製造方式には、蒸着方式と印刷方式の2種類がある。

 有機ELで先行するサムスンとLG電子は蒸着方式を採用。主にスマホなど小型ディスプレイ向けに量産している。蒸着方式は、真空環境で材料を加熱・気化させてEL層を形成。製造プロセス環境を真空にすることに加えて、パネルの必要な部分に膜を形成する高精度なマスクを必要とする。つまり、蒸着方式は高価な製造装置が必要な一方、高精度マスクでの歩留り向上に難があり、大型ディスプレイ製造には不向きといわれる。

 印刷方式は、有機EL層を印刷により塗布・形成。生産工程がシンプルであり、製造コストを3~4割下げられるという。JOLEDは昨年5月、21.6型の試作に成功、12月には医療向けに21.6型4K製品を出荷していた。

●有機EL製造装置の「技術ライセンス」提携

 産業革新機構は、JOLEDに75%を出資。15%を出資するJDIの業績不振から、JOLEDの完全子会社は見送られている。

 このような状況で、「技術ライセンス」収入に活路を見出したのであろう。印刷方式での有機EL製造が業界標準になれば、新たなビジネスが期待できる一方、将来にわたって印刷方式の製造技術を牽引していくことが、安定したライセンス収入につながる。

 JOLEDは印刷方式の製造技術の提供と技術導入のサポートを、パナソニックプロダクションエンジニアリングは、顧客ニーズに合わせた印刷設備の設計開発を、SCREENファインテックソリューションズは、ディスプレイ製造工程で使われる各種装置の提供を担う。

 産業革新機構が支援した半導体大手ルネサスの躍進のように、JDI、JOLEDも大きく飛躍することを願う。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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