【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4):◆気が付けば中国孤立化◆

2018年8月5日 10:15

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記事提供元:フィスコ


*10:15JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(4):◆気が付けば中国孤立化◆
〇来週にかけ、北戴河会議のヤマ場か〇
2日付時事通信は、人民日報などから習主席らの動静を伝える記事が一斉に姿を消し、事実上、北戴河会議が始まった様だと伝えた。米国が2000億ドル分の関税を10%から25%に引き上げる方針を発表し一段と圧力を掛けたのは、そのタイミングを狙ってのものと思われる。ロス商務長官は「影響は軽微、大惨事にならず」との考えを示した。

米中貿易戦争での習批判は大別すると二つある。一つは習氏の「強国」路線そのものが米国の怒りを招いたとの点。習独善体制として、終身皇帝、個人崇拝などの批判につながる。もう一つは5月の米中「合意」をはじめ、対抗しようとする姿勢自体を間違ってきたとする批判。交渉窓口となった劉鶴副首相など、側近政治への批判につながる。

中国は7月6日の340億ドル相当分の関税に対し、まず米国内の批判の高まりに期待し、大豆などの農家を狙い打った。トランプ大統領は大恐慌時並みの農家支援策を打ち出し、アッサリ交わした。大豆や米国産牛肉は値下がりしているが、EUなどの爆買いで捌いている。次にEUとの協調を持ち掛けたが、25日の米・EU合意でこれもアッサリ交わされた。親中国ドイツまで、安全保障を理由に中国企業による精密機械株の買収を阻止した。習主席はわざわざアフリカに出掛け、BRICs首脳会議でプーチン露大統領等に共闘を呼び掛けたが、トランプ大統領は先手を打って米ロ首脳会談を行い、(米国内に反発が強いが)米ロ協調路線を示した。振り返れば、6月12日の米朝首脳会談は中国孤立化への第一歩だった可能性すら指摘されている。

2日付産経新聞は「世界一寂しい国際空港」の話を伝えている。中国が13年に約234億円かけて作ったスリランカのマッタラ・ラジャパクサ国際空港で、1日の平均乗客数は10人以下、定期便もゼロ。スリランカはインドに支援要請していると言う。1日付NHKはマレーシアが中国企業による大型インフラ事業を相次ぎ停止していると伝えた。5月にマハティール政権に交代となった。「一帯一路」の破綻は明らかで、次の焦点は先の選挙で政権交代となったパキスタンと思われる。

アジアの中国離反が目立つ中、ポンペイオ米国務長官は「自由で開かれたインド太平洋戦略」の具体化を打ち出し、インフラ関連で1億ドル強のファンド設立を表明した。元々、安倍首相が提唱していたもので、日豪がすかさず協力を表明した。ペンス副大統領はウイグル人権問題を厳しく批判、8月に南米を訪問予定の台湾・蔡総統はヒューストンに立ち寄り、米要人と会談を行うのではないかと憶測されている。安全保障問題や人権問題に広がって、共産党独裁・覇権主義的な中国のやり方批判に広がって行くものと考えられる。中国の出方は不明だが、当面の経済運営に腐心しながら、習体制の何等かの変更を打ち出してくる可能性が考えられる。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(18/8/3号)《CS》

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