関連記事
旭化成、川上から川下へ開発力強化 グローバル展開で25年売上高3兆円を展望
旭化成は19日、約1,200億円を投じて、自動車内装シートの世界大手アメリカSage社を買収すると発表した。
【こちらも】三菱ケミカルHD、ポートフォリオの最適化で高成長・高収益へ挑む
中期計画でマテリアル領域の重点分野として自動車向け事業の拡大を図っており、買収によって自動車メーカー、部品メーカーへの直接アクセスを強化。素材だけを生産する川上から川下へ近づくことにより車室空間における総合的なデザイン、ソリューションを提案・提供することを目指していく。
旭化成は、1922年に積水化学工業、積水ハウス、信越化学工業など日窒コンツェルンを創業した野口遵によって設立された。その後日本で初めて水力発電からアンモニアを合成することに成功するなど、合成化学や化学繊維事業からスタートし、現在では、繊維・ケミカル・エレクトロニクス事業からなる「マテリアル」領域、住宅・建材事業からなる「住宅」領域、医薬・医療・クリティカルケア事業からなる「ヘルスケア」領域で連結対象会社225社を抱える旭化成の動きを見ていこう。
■前期(2018年3月期)実績と今期(2019年3月期)見通し
前期実績は、売上高2兆422億円(前年比109%)で、営業利益は前年よりも392億円増の1985億円(同125%)と、いずれも過去最高を更新した。
営業利益増加の主な要因としては、マテリアル領域のケミカル事業が石油化学と高機能ポリマーで交易条件改善、高機能マテリアルズ・消費財で電子材料製品とサランラップの好調により前年より257億円増益、エレクトロニクス事業がリチウム電池用セパレータの増販とスマホ向けカメラモジュール、家電向け磁気センサーが好調な電子部品により72億円の増益、ヘルスケア領域のクリティカルケア事業が医療機関向けに除細動器が大幅に増加したことにより50億円の増益などによるものである。
今期見通しは売上高2兆1,550億円(同106%)で、営業利益は1,900億円(同96%)を見込んでいる。
■2025年度展望による戦略的成長施策
2025年度展望で収益性の高い付加価値事業の集合体を作り、売上高3兆円、営業利益2,800億円を目指して下記の施策を推進する。
1.成長と収益性の向上
・マテリアル領域(収益性の向上): 自動車メーカー等との関係を強化し、低燃費タイヤ素材、リチウム電池用セパレータ、車載用電子部品の増産。
・住宅領域(安定継続成長): 戸建、集合、マンションの請負開発事業とリフォーム、賃貸管理、仲介のストック事業との有機的連携強化。
・ヘルスケア領域(高成長): 骨粗鬆症、関節リウマチ治療剤の発売、中国透析事業強化、ウイルス除去フィルターの生産増強。
2.新事業の創出
炭酸ガスセンサー事業など素材デバイス、生産技術、システムなど多様な技術と事業を組み合わせた新事業を創出展開する。
3.グローバル展開の加速
日本、アジア、北米、欧州でのエリア戦略を明確にし、グローバル展開を加速する。
川上から川下への距離を縮め、開発時間の短縮、新事業の創出、グローバル展開を進める旭化成の動きから目が離せない。(記事:市浩只義・記事一覧を見る)
スポンサードリンク