NYの視点:米中貿易戦争の一段の悪化はGDP成長に影響も

2018年6月20日 07:36

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記事提供元:フィスコ


*07:36JST NYの視点:米中貿易戦争の一段の悪化はGDP成長に影響も
米国のトランプ政権は先週15日、農産物や工業品を含んだ500億ドル相当の製品に25%の輸入関税を賦課すると発表した。7月6日から340憶ドル規模の輸入品に賦課する。米国の警告にかかわらず、中国も500億ドル相当の製品に関税を課すと速やかに報復措置を発表した。

トランプ大統領は関税が発動される7月6日までに、2国間合意にたどり着きたい考えだったと見られる。しかし、トランプ大統領と中国の周主席の間で交わされた中国通信機器大手ZTE制裁解除に関して、米国議会が18日、阻止する法案を賛成85、反対10で可決。ZTEは4月、イランや北朝鮮への禁輸措置違反に絡み、米国の半導体メーカーなどとの取引を7年間禁じられ、操業停止に追い込まれた。しかし、米朝首脳会談を絡め、米中貿易協議の一環としてトランプ大統領が罰金支払いなどを条件に制裁解除を決めていた。

議会のZTE制裁解除を阻止する法案成立には、下院との調整やトランプ大統領の署名が必要となるものの、状況は一転悪化。トランプ米大統領は18日声明を発表し、「もし中国が通商慣行の変更を拒否し、また同国が(米国製品に対する追加関税を進めると主張するなら、中国製品2000億ドル相当の追加関税を実施する」を主張。また、最大で4500億ドルの追加関税を課す用意があるとした。対中貿易は4620億ドルにのぼるため、ほぼすべての製品を対象とする可能性があるということだ。

今まで、ロス商務長官やFRB高官、市場エコノミストは関税が経済に与える影響は少ないとしてきた。しかし、トランプ大統領が示唆している最大で4500憶ドルの輸入制限が具体化した場合には、経済に影響を与えると、エコノミストは警告している。オックスフォードエコノミックスは「もし、貿易戦争が言葉だけでなく、具体化した場合、中国、米国、世界経済にも大きな影響を与える」とし、中国の成長で0.3%ポイント、米国の成長で0.2%ポイントそれぞれ引き下げるとした。トランプ政権が実施した減税の効果をほぼ相殺する見込み。米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げペースにも影響を与えかねない。《CS》

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