産総研と日揮、再エネ水素から再エネアンモニアを合成 実証試験を開始

2018年5月28日 11:53

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アンモニア合成実証試験装置外観(写真:産総研の発表資料より)

アンモニア合成実証試験装置外観(写真:産総研の発表資料より)[写真拡大]

 産業技術総合研究所(産総研)再生可能エネルギー研究センターの水素キャリアチームは28日、再生可能エネルギーの特徴に対応した新規アンモニア合成触媒を開発したと発表した。本触媒を用いた実証試験装置によるアンモニア製造実証試験を、日揮と共同で開始する。

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 地球環境の保全と持続可能な社会の構築。低炭素社会の実現が世界的な課題である中で、二酸化炭素(CO2)を排出しない水素エネルギーに対する期待は高い一方、安全性やコストをはじめとした輸送・貯蔵の効率性などの課題を克服することが必須だ。

 産総研はその方策として、水素をアンモニアや有機ハイドライドなどの水素キャリアに転換する技術開発を検討。水素を低温・低圧でアンモニアを合成する触媒の開発に成功した。

 アンモニアは水素を多く含み、実用化に最も近いとされる水素キャリアだ。液化が容易であり、アンモニアを直接燃焼できるが、燃焼時にCO2を排出しない。加えて、肥料原料としての流通経路が確立されていることが特徴だ。

 詳細は、29日に郡山市で開催されるFREA成果報告会で発表される。

●新アンモニア合成触媒の特長

 再生可能エネルギーを利用して製造した水素(再エネ水素)からアンモニア(再エネアンモニア)を合成。この合成実現には、2つの課題がある。圧力を上げると性能が低下するというルテニウム触媒特有の課題と再エネ水素の供給量が一定でないという制御の課題だ。

 新規触媒は、触媒成分であるルテニウムをナノ粒子として担体に分散し、水素被毒によって高圧では性能が低下してしまう問題を克服。従来の2~3分の1の100気圧程度で、アンモニアの合成を可能にした。

 変動する再エネ水素供給に対応するためには、原料の濃度や流速の変化に応じて運転を制御する必要がある。そのため本プロセスの触媒は、最適運転条件のみならず、そこから運転条件が変化した場合にも安定してアンモニアが製造できるという。

●アンモニア合成(産総研と日揮、新規触媒)のテクノロジー

 アンモニアの合成には「ハーバー・ボッシュ法」があるが、天然ガスを用いて水素を製造するために大量のCO2を排出する。そこで、水素の製造過程におけるCO2排出量の削減方法として、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで水を電気分解して水素を製造する方法に期待を寄せる。

 再生可能エネルギーで製造された水素は低温・低圧であるとともに、一般の化学プロセスでは例がない、水素供給量が時間によって変動するという問題を抱えている。今回、この2つの課題を解決し、再エネアンモニア合成の実証実験の開始まで漕ぎ着けた。

 再エネ水素供給量の変動を想定した条件での実証試験装置運転では、アンモニアの生産能力日量20キログラムが達成できることを確認する予定だ。これによって、日本が2030年までに革新的で低炭素な水素エネルギー社会を実現することに貢献するという。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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