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本の流通に巻き起こる激しい変革 (2)アマゾンの「発行日当日に自宅に届く」システムの破壊力
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全国で書店減少の流れが止まらない。電子書籍という活字との新しい親しみ方が社会で認知され始め、アマゾンジャパン(アマゾン)などのネット書店が日増しに存在感を増し、ヨドバシカメラなどでもポイント割増しで書籍のネット販売を強化している。
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リアル書店の最大の利点は書籍をその場で黙読できることであり、書籍選びの醍醐味でもあった。話題作と言えども人それぞれの好みには勝てない。書店でページを繰って納得して買ってもらうための理想的な商品在庫には限りがなく、それなりの売り場面積が必要である。従来の街の本屋さんは、父ちゃん母ちゃんが交代で仕切る程度の小規模店がほとんどであったため、読者のニーズに十分応えることができない。元々利幅がある商品でもないので、店舗を拡張する蓄積も資力もない。子供が喜んで後継するケースも限られるため、経営者の高齢化が止めとなって廃業するケースが多いようだ。
ネット書店の場合は書籍現物を手にすることができない最大のハンディはあるが、読者が購入書籍を決めている場合には書店に出向く必要がない点が有難い。週刊誌や月刊誌のような定期刊行物、シリーズ物、贔屓(ひいき)作家の愛読者などは重宝しているのかも知れない。
アマゾンは、出版の取次を通さずに出版社との直接取引を広げようとしている。アマゾン自身が出版社の倉庫へ出向いて本や雑誌を集荷し、発売日当日には消費者の自宅に届けるサービスを、一部地域を除く全国で始めている。このビジネスモデルが定着した暁には、取次や書店を通さない販売が増加し、小規模なリアル書店はますます苦境に追い込まれる。コンビニですら安閑とはしていられまい。知の源(みなもと)の大半がアマゾンの流通に委ねられる日が到来するのであろうか?
取次も苦しい。中堅の取次が相次ぎ経営破綻に直面し、上位2社のトーハン・日本出版販売のシェアの増加が続いている。しかし、シェアの増加が販売額の増加を意味する訳ではない。16年の取次を通した出版物の販売金額は約1兆5000億円で、前年実績を12年連続で下回り、この期間で約1兆円減少した。取次首位の日販と2位のトーハンが大都市での共同配送を始めたが、出版市場の低迷や運送業界での人手不足により、出版配送が厳しい環境下にあるための苦肉の策だ。既にじり貧状態に追い込まれている。
金融業界も、百貨店業界も、出版業界も、従来のビジネスモデルが行き詰り、新しいデザインが描かれていない。航路の見えない大海に、漂い始めたようなものだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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