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世界74カ国で調査 学校の成績は女子が男子にまさる
●2000年から2010年に行われた「OECD生徒の学習到達度調査」
経済協力開発機構(OECD)が74カ国を対象に行った学習到達調査によると、70%以上の国で女子生徒の成績が男子生徒の成績をしのいだ。この結果は、調査対象になった国の男女平等度の水準には比例しないことも明らかになった。
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●男子が女子より優秀であったのはわずか3カ国
対象となった国や地域の70%以上において、学校の成績は女子のそれが男子をしのいだ。この結果は、政治的、経済的、社会的な男女の平等度の水準とはまったく無関係であることも判明した。
例外は、コロンビア、コスタリカ、ヒマラヤ山脈のヒマーチャル プラデーシュ州だけで、この3地域に関しては男子生徒の成績のほうが女子よりもよかった。
また、開発途上国では男女の成績に差はなかった。ごくわずかの国で、成績上位グループの男子の数が僅差で女子に勝るという程度にとどまった。
●対象となったのは15歳の男女150万人
この結果は、経済協力開発機構が2000年から2010年までのデータを収集して発表された。調査は、「PISA(Programme for International Student Assessment)」と呼ばれている。
15歳の男女150万人を対象に、数学、科学、母国語の学力が評価される。
●一般論とは相反する調査結果
この結果を、心理学者であるリーズ・ベケット大学のGijsbert Stoet教授とミズーリ大学のDavid C. Geary教授は、こう見ている。
一般的に、社会的、経済的、政治的な男女間のギャップは、学校での能力(とくに数学と科学)に反映するといわれている。しかし調査結果はその仮説を立証していない。
2教授の論説は、雑誌「Intelligenze」に掲載されている。
●社会的背景と男女差が比例しない例とは
男女のあいだで成績に差がなかったのは、米国、デンマーク、オランダ、英国といった先進国にとどまらない。開発途上国であるペルー、チリ、メキシコも同様であった。
また、フィンランド、アイスランド、ノルウェーは、社会的にも男女同権がもっとも進んでいる国といわれているが、この3カ国においては女子の成績の優位がとくに顕著であった。一方、家父長権が現在でも強いイスラムの国でも、女子の成績が男子の成績を上回っていることが明らかになっている。イスラムの国々は男女同権度が低く、女性が社会に進出する機会は制限されているにもかかわらず、女子の成績は男子をしのいだ。
●調査結果が提起するものは
カタールやフィンランドという社会や文化を異にする国々で女子の成績が男子の成績をしのいだという事実は、社会的レベルでの男女平等は学業に大きな影響を与えないことを示している。
女性が高い教育を受けキャリアを築く機会は、以前に比べれば飛躍的に増加している。にもかかわらず、政治、経済、学問の分野における女性のリーダーが現在も少ないのは、女性であることを理由に資質に対する過小評価がされているのではないか。
2教授は今回の調査結果をもとに、社会問題として女性の過小評価について提起していくと語っている。
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