アルツハイマー病を簡単な検査で判定可能な技術が開発

2018年2月4日 12:05

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 アルツハイマー型認知症の原因となる物質を、わずかな血液で検査できる方法が開発された。開発したのは、国立長寿医療研究センターと島津製作所の共同研究チーム。

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 認知症の中でも、もっとも多いのがアルツハイマー型認知症でる。発症する認知症の中で、半数以上がアルツハイマー型認知症であるといえば、おわかりいただけるだろうか。

 そのアルツハイマー型認知症というのは、脳にアミロイドβ(ベータ)というタンパク質がたまることで脳の神経細胞が壊れ、脳萎縮が起こることで発症する。

 アミロイドβは、認知症の症状が出る20年以上前から脳の中に蓄積されることは研究により判明している。しかし、その状態を知るためには、陽電子放射断層撮影装置(PET検査)や脳脊髄液の採取という、どちらも10万円以上はする高額費用を負担して検査を行わなければならないのが現状である。

 共同研究チームは、アミロイドβが脳に蓄積すると、血液の中に微量に含まれるアミロイドβに関連する物質ペプチドの一種が減少することを発見。しかも検査に使用した血液の量は、わずか0.5mlだという。

 また、日本人とオーストラリア人を対象とした臨床検査(認知症、軽度認知症、認知症ではない健康な人を含む)も実施した。

 従来のPET検査の結果と比較すると、約90%の一致という高い確率でアミロイドβの蓄積の有無を判定することができた。他にもアルツハイマー型認知症を発症していない人の約3割でアミロイドβの蓄積が確認されている。

 今回の研究開発の鍵となったのは、2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんの技術(質量分析技術)だった。アミロイドβに関連するペプチドという物質が数種類存在し、その質量の差を正確に分析することができたおかげで、開発ができたのである。

 国立長寿医療研究センター研究所所長柳沢勝彦氏は『当面は、治療法の開発のための患者を見つけ出すために使い、将来的には検診にも使うことができればと考えている』と期待を覗かせている。

 同じく共同研究を行った島津製作所は『製薬会社や研究者向けに血液を分析するサービスを提供していく』と今後の方針を語っている。(記事:和田光生・記事一覧を見る

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