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植物の中の「水の通り道を広げる遺伝子」が発見される
(左)植物の体内において水分は道管を通して全身に運ばれます。道管内の水分は道管から隣の道管へ、さらに道管から茎、葉、根の体細胞へと壁孔を通して運ばれます。(右)CORD1の量が多いと細胞壁の沈着を促進する微小管の並び方がバラバラになり、大きな壁孔が作られます。逆にCORD1の量が少ないと微小管はしっかりと平行に並び小さな壁孔が作られます。(画像:国立遺伝学研究所発表資料より)[写真拡大]
植物内にあって、水の通り道となる部分を広げる機能を持った遺伝子が発見された、と国立遺伝学研究所が発表した。
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陸上の植物は、地下から水分を吸い上げ、全身に行き渡らせる。光合成には水が必要である。体を維持することそのものにも、充填材としての水が必要となる。水分は、「道管」と呼ばれる筒状構造の中を通り、茎や葉に運ばれる。道管には、壁孔と呼ばれる直径数ミクロンの微小な穴があり、これがその機能を果たす上で、非常に大事な役割をしている。だが、この壁孔の大きさが、どうやって決まるのかは、これまでほとんど分かっていなかった。
ところで、動物にも管がある。例えば血管である。管状構造は、動物組織内においてどのように発生するか。筒状のものを、筒状にして形作るのは、工学的には難しい。実は、どうしているかというと、まず、長い紐状のものが生み出される。そして、その紐状のものの、芯となる部分が自己崩壊を起こす。アポトーシス、自律的な細胞死と呼ばれる現象だ。全てとは言わないが、動物の体内の筒状構造の多くはこうして作られる。
壁孔の発生も原理はこれに似ている。構成要素の一部が分解され、水を通すための穴ができるのである。今回発見されたのは、その、分解される部分の構造を決定する、つまり細胞の安定性を下げる機能を持ったタンパク質だ。CORD1 (Cortical Microtubule Disordering1)と名付けられたタンパク質が、植物の壁孔の形成において決定的な役割をなす、と考えられる。
今後の研究としては、このCORD1を人為的に制御することで、より効率的な水分輸送を可能とする植物、たとえば農作物など、が開発できるかもしれない、と期待されるところである。
なお、研究の詳細は、米国科学雑誌The Plant Cellに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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