【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆トランプ相場、ほぼ1周年◆

2017年11月12日 09:50

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記事提供元:フィスコ


*09:50JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(2):◆トランプ相場、ほぼ1周年◆

〇劇的変化から約1年、トランプ相場の持続力〇

下馬評のクリントンからトランプ当選に劇変したのは、昨年11月9日から10日に掛けて。日経平均は9日に919円安(16251円)した後、10日に1092円高(17344円)と乱高下した。基準を何処に取るかで微妙に変わるが、米株市場の劇変に翻弄された格好。昨日6日時点の日経平均前年比上昇率は29.4%、ドル建て日経平均の上昇率は18.8%なので、10%強が円安分になる。トランプ政策は、何かが実現した分けでなく、期待感で醸成されてきたが、世界経済の安定拡大や為替安定に貢献してきたと言える。

業種別差異を見ると、40%以上の上昇率は7業種。石油・石炭+48.29%、非鉄金属+47.78%、電機機器+44.51%、40%強に化学、ガラス・土石、その他製品、空運が並ぶ。逆に、上昇率10%台に止まるのが、食料品、医薬品、輸送用機器、電気・ガス、陸運、小売、不動産。上昇率が大きいのはトランプ効果と言うより、中国の安定拡大効果の大きいセクターで、構造不況業種のイメージが強かったセクターの業容変化が評価されたと考えられる。上昇率の小さいのは、いわゆる内需セクターと言われるところで、相対的に海外展開の遅れ、国内景気の足踏み感を示していると考えられる。全ての業種が二ケタ上昇しているので、世界的な株高、株式市場への資金流入が支える構図が続いている。

実は、業種別より上昇率の高い分類がある。東証二部株指数で+48.40%を記録している。ジャスダック指数も40%強で、マザーズ指数の+19.54%、REIT指数の-9.28%を大きく引き離す。最近の二部株は銘柄入れ替えも結構激しく、分析報告も少ないのであくまでイメージだが、流動性が低いために割安放置されていた銘柄見直しが進んでいるためと考えられる。意外と古い素材業種、例えば木材関連などで株価の居所を変えている銘柄が目立つ。

NYダウの前年比は+23.35%、ナスダックは+25.72%なので、10月総選挙後の上昇で、日本株の方が上昇率が大きくなった。米株の最高値更新基調は変わっていないので、来年のポートフォリオ構築、銘柄入れ替えの流れは高値圏で進むと思われるが、シナリオ、相場イメージの構築は遅れる公算も大きいと考えられる。M&A案件が目立つのは、端境期を示唆するケースがある(逆に言えばM&A先回り思惑が再評価要因になる)。

その一つのカギを握る米中交渉が、北朝鮮問題を含め今週後半ヤマ場となる。米中対立激化と見る見方、北朝鮮カードを軸に米中連携との見方など交錯するが、中国自身の経済問題が噴出するリスクも抱える。なお、トランプ−プーチン会談も注目(おそらく、ベトナム、フィリピンの二度機会がある)されているが、喧伝されている「トランプ政権のロシア疑惑」は、クリントン財団の問題(ウラニウム・ワンの売却問題で便宜を図り巨額献金を受け取った疑惑)やロス商務長官などの「パラダイス文書」問題に移行しているので、「対北朝鮮での最低限の協力約束」が課題と思われる。

1周年だからソロソロと言う訳ではないが、基調変化材料を注視する流れが続くと考えられる。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/11/7号)《CS》

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