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ソニーが先進運転の眼力向上 160メートル先の標識を識別するセンサー開発
車載カメラ向けCMOSイメージセンサー『IMX324』(写真:ソニー発表資料より)[写真拡大]
ソニーは23日、先進運転支援システム(ADAS)用途のCMOSイメージセンサー「IMX324」を商品化し、11月からサンプル出荷を開始すると発表した。
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スマートフォンやカメラでのイメージセンサーのシェアは、ソニーの独壇場であり、さらに車載向けでも存在感を示している。2016年10月、デンソーがソニーの画像センサーを採用。今回は、車載カメラ向けのイメージセンサーの解像度を業界最高水準まで高めた。742万画素は、160メートル先の交通標識を識別できる精度であり、既に人間の眼を超えた識別能力を持つ。この識別能力は、ADAS市場でのソニーの存在感をさらに増すのであろう。
●インテル傘下のモービルアイのEyeQ4、EyeQ5に対応
開発したイメージセンサー「IMX324」は、モービルアイが開発中のイメージプロセッサーEyeQ4、EyeQ5と接続可能になるという。モービルアイは、ADASや自動運転を手掛けるイスラエルの会社で、今年インテルが車載市場へ参入・競争優位を獲得するために、150億ドルで買収した企業である。買収額は過去2番目の大きさである。
このモービルアイのイメージプロセッサーEyeQ4、EyeQ5との接続は、車載採用の大きな足掛かりであろう。車載純正品は、厳しい信頼性試験や機能安全要求がある。そして、その評価認定に数年を要することもあり、車載の受注活動での朗報であろう。
●「IMX324」の特長
車載カメラ向け業界最高解像度の742万画素は、従来のIMX224MQVと比較して、3倍の解像度である。遠方撮影では約160m先にある交通標識の高精細な撮像を可能にした。
月明かりの夜間でも、遠方の障害物や人物などを撮像できるように、信号処理を工夫して高感度2666mVを実現したという。加えて、周辺の明暗の状態から適切な信号処理方式を選択し、高解像度を実現している。
センサーの小型化のために、車載カメラ向けイメージセンサーとして業界初の積層構造を採用。画素部分と信号処理部分を重ね合わせた積層構造は、小型化のみならず、低消費電力化の効果もある。
車載に求められる品質・機能安全にも対応する。例えば、機能安全規格「ISO26262」に準拠した開発プロセスの導入などである。特記すべきは、イメージセンサーから出力される画像の改ざんを防ぐセキュリティー機能を業界で初めて実装したことだ。ADASが画像に頼るならば、悪意ある改ざんは重大な事故につながり、それに対応した形だ。
●イメージセンサー(ソニー、「IMX324」)のテクノロジー
業界最高の742万画素での160メートル先の交通標識の認識、業界初の積層構造での小型化と低消費電力、業界初の画像改ざん防止セキュリティーの実装を謳う。ADAS市場のイメージセンサーでもトップを目論むのであろう。
特に小型化と低消費電力は、設置場所の観点からの制約が大きいのであろう。設置場所は、ルームミラーの裏側の限られたスペースであり、かつ直射日光の温度上昇影響もある。この制約を解決することを意識しているとみられる。
モービルアイのイメージプロセッサーと「IMX324」との組み合わせは、シェア獲得へとつながるであろう。モービルアイはこの市場での有力候補であり、この組み合わせが標準となる可能性は高い。なお、「IMX324」はモービルアイ専用ではなく、車載カメラの標準を目指しているのであろう。
最後に、車載向けの品質要求への対応だ。信頼性試験基準「AEC-Q100 Grade2」を2018年6月までに満たし、機能安全規格「ISO26262」に準拠した開発プロセスを導入、機能安全要求を満たす設計品質を実現している。機能安全要求レベルは「ASIL B(D)」に対応したという。(記事:小池豊・記事一覧を見る)
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