鉄道自動ドア技術は必要があっての世界一、活かし方を考えたい

2017年10月3日 11:36

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インドではドア部分に立って乗車する人も。(c) 123rf

インドではドア部分に立って乗車する人も。(c) 123rf[写真拡大]

 乗客、利用客としてみたときに鉄道の重要部品は幾つか挙げられるであろうが、真っ先に目につく部品の一つがドアである。乗るときにドアが開くのだから最初に目に入る。このドア、特に、都市部の鉄道ではいかにスムーズに正確に静かに、乗客を安全に車内に収めておけるか、という「迅速」「静粛」「安全」が求められる、技術的に高度な制御装置、重要な装置であるといえる。

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 導入期の鉄道は、石炭蒸気機関車駆動の客車列車であり、ドアは手で開閉させるのが当たり前だったのは当然だが、その後はどうだったろうか?

 鉄道の大衆化が進むと乗客が増え、ドアは動力が必要な自動装置に移行して行くことになる。

 その動力は、車輛に備えてある他の装置類の動力源と共通のものを使う設計が合理的である。蒸気機関駆動で列車が動く時代であれば、空気圧・油圧等の圧力機械を使うのが自然な設計になるが、やがて電化が進み、機関車は電機駆動、各車両にモーターが備えてある電車が主力になって来る。さらに、車輛搭載機器の軽量化、電機モーターの省エネ化が進むと、電気系統を有効活用出来るため、電機モーター方式が主力になって来る。最近まで旧き良き「汽車旅」の風情をふんだんに湛えた姿で走り、東京や大阪を起点に北陸や山陰、四国、九州を結んでいた夜行寝台特急の客車は空気圧ジャバラ方式のドアだったが、こちらは廃止になり、電機モータードアの電車による寝台特急に置き換わったのは、時代の要請かも知れない。

 こうした流れの中、日本の鉄道は、自動ドアを乗客の安全を護るための基本設計の重要部分を担うものとして取り扱って来た。そして、まぎれもなく、日本の鉄道車輛ドア技術は世界一だろう。しかし、一方で、もう少し考え直してみたい。ドア技術は、このまま世界に売り出せる技術や製品かと云えば、必ずしもそうではないことに気を付けたい。例えばインドを例にすると、ドアは開けっ放しである。乗客は列車から線路に放り出されても自己責任なのだ。これは非常に極端な例だが、考えておきたい点は地域、国、文化により必要とされるものは変わる、当たり前の原則である。

 インドへの鉄道輸出も重要な国家の産業戦略に挙げられてはいるのだが、他の地域でもこうした視点を持って鉄道関係者はプロジェクト推進しているであろうし、間接的に参加しようとする場合も頭に置いて、輸出プロジェクトに関わって行きたいと改めて思うのである。技術は市場の要請があって成り立つもの、当たり前だが、常に立ち戻って考えるべき原点である。ドア技術は、鉄道技術と輸出事業に当たって考察すべき要素技術の典型例の一つであろう。インド向けにカスタマイズするのであれば、例えば、落下防止柵が列車の振動に応じて自動で出現するような機構を設ける、それが世界一高度な自動ドア技術の応用だった、というような活かし方を考えるのが一例である。(記事:蛸山葵・記事一覧を見る

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