日本航空機でエンジン失火のトラブル発生 万全な安全体制の確立を望む

2017年9月6日 16:47

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事故が起きた機体と同型の日本航空のB777機。(c) 123rf

事故が起きた機体と同型の日本航空のB777機。(c) 123rf[写真拡大]

 5日午前11時すぎ、ニューヨークへ向かうため羽田空港を離陸した日本航空6便ボーイング777で、左エンジンに一時、炎が確認された。このため同機は管制官に緊急事態を宣言して羽田に引き返し、午後0時9分に無事着陸したことを各紙が報じた。乗客乗員は計251人で、けが人はいなかった。

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 第一報の時点では、鳥が衝突するバードストライクが原因とみられる(一部報道では機長から同趣旨の報告があったと伝えている)との日本航空の見解が示されていたものの、午後0時9分に着陸したのち、エンジン内部を点検した結果鳥類との衝突をうかがわせる痕跡が確認できないことから、国土交通省は「バードストライクが原因ではない」と第一報を否定した。

 航空機におけるバードストライク事故は離陸動作中(滑走、離陸直後)、あるいは着陸動作中の速度が比較的遅く、高度が低い時に起こりやすいとされ、ジェットエンジンが主流となった現在の航空機はエアインテーク(空気吸入口)に吸い込まれる事故が多い。特に旅客機のジェットエンジンはエアインテークの直径と推力が大きいうえに地面に近いため、バードストライクが起こりやすいとされている。今回事故を起こしたボーイング777のエンジンGE90型はファンの直径が3m以上もあることから、バードストライクを伝えた報道はこうした知識が伏線になっていたかも知れない。

 日本航空は以前、数多くの赤字路線を抱え肥大化した組織や、職種ごとに細分化した組合問題等を指摘されていながら改善が進まなかったが、2008年のリーマンショックを契機とする乗客の減少、燃料費の高騰によって急速に経営状況が悪化し、2010年に会社更生法を申請し経営破綻した。皮肉なことにこの破綻によって、日本航空は様々ないきさつ、慣例・呪縛から解放され徹底的な経営改善に成功した。債権の放棄により有利子負債が一時期10分の1にまで減少し、他社から「優遇され過ぎ」と揶揄されるほどの法人税の優遇措置を受けて優良企業に復活を果たした。社内ではまたぞろ殿様意識が復活しているとの指摘も聞かれる。

 現在のところ離陸前の点検では異常がなかったと報道されているが、今回の事故が「バードストライクが原因ではない」と判断された以上、整備不良等の社内体制に疑惑の視線が集まることも止むを得ない。「ハインリッヒの法則」まで引っ張り出す必要はないと思うが、社内の浮ついた空気を払拭する”好機”に転換させて欲しいものである。

 ※ハインリッヒの法則:1つの重大事故が起こった背景には、29の軽微な事故と、300の異常が存在するという法則(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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