関連記事
【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆インフラ投資は再始動できるか◆
*10:05JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆インフラ投資は再始動できるか◆
〇米インフラ遅延、アジアで動き〇
8日の英総選挙などイベント集中を前に、ドル安円高の仕掛け的な動きで110円割れとなっている。イベント前の動き難い局面で相場が動きやすい傾向を反映したものだが、米10年債利回りが一時2.13%台にまで低下していることが主因と考えられる。もう一つ、2月の日米首脳会談時に盛り上がった「日米投資イニシアティブ」、報道では米インフラ投資に50兆円規模の資金を流す構想が報じられ、安定的なドル買い支えの期待があったが、その姿がなかなか見えてこないことも遠因と考えられる。
例えば、期待案件の米国新幹線では、JR東海が技術協力を表明しているダラスーヒューストン案件では18年着工計画ながら、進展の動きはないと伝えられる。JR東はカリフォルニア高速鉄道に参加しないと4月に表明した。ワシントン-ニューヨークのリニア構想も幻の段階。計画自体に無理があるのか、周辺の規制(バイアメリカン法、環境規制など)も日本企業に不利に働くとの現実の見方も出ている。そもそも、「ロシアゲート」問題で、トランプ政権が揺らいでおり、安定的なインフラ投資推進体制の構築が遅れている。
一方、アジアでは具体的な動きが出ている。5月26日、ベトナム初の地下鉄工事がホーチミン市で始まった。全長20kmで総事業費2400億円(円借款1500億円余)。2020年11月開業を目指し、清水建設などゼネコン各社が取り組む。4月には日立造船がベトナム初の産業廃棄物発電所を稼働させ、送電を開始した。都市課題に対するニーズの強さを示している。タイではバンコク-チェンマイの高速鉄道計画で、専用レールの新幹線フル規格採用が決まった。フィリピンでは同国最大規模の浄水場建設をJFEエンジニアリングが受注した。日本企業のアジア事業に投融資する国際協力銀行の16年度実績は8432億円、前年度比
2.5倍。資金供給の水先案内人としての活動が本格化し始めた。
「海外インフラ投資」は日本経済の成長シナリオに組み込まれているが、当面マクロ的なインパクトより、個別案件での企業業績拡大材料として看做されることになろう。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/6/7号)《CS》
スポンサードリンク