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NYの視点:米国のドル政策をめぐる憶測
*07:48JST NYの視点:米国のドル政策をめぐる憶測
トランプ新政権は貿易、通貨戦争を恐れていないようだ。「アメリカ第1主義」を唱えているトランプ米大統領にとって、製造業をよみがえらせ、国内の雇用を守ることが最優先。そのためには米国が長年掲げてきたドル高政策を放棄することも辞さないとの見方も浮上した。トランプ米大統領は先月末、製薬会社のトップとの会合で、「中国や日本など、ほかの国々は資金供給と通貨安への誘導で有利になっている」と発言。また、トランプ大統領が国家通商会議代表に指名したピーターナヴァロ氏も、英フィナンシャルタイムズ紙に「ドイツは「過小評価が著しい」ユーロを利用することで米国や欧州連合(EU)の貿易相手国よりも有利な立場を得ている」と発言した。トランプ米大統領は選挙中、中国を通貨操作国として認定すると訴えていたほか、就任前、「人民元に対してドルが強すぎるため米国の製造業は中国の製造業に勝ち目はない」との見解を示していた。日本や欧州も通貨操作国として捉えられる危険も残る。通貨問題は2国間の貿易交渉に含まれることは必至。
2月10日には日米首脳会談が控えている。安倍首相は日本の金融政策が円安誘導とするトランプ大統領の批判は「当たらない」と反論。報道によると、日本政府は投資や米国内での雇用の創出でトランプ政権に協力する意向を提示する模様。米国の対中、ドイツの貿易赤字は実際縮小傾向にある。ドイツもメルケル首相が「ドイツは欧州中央銀行(ECB)に独立した金融政策運営を行うよう求めてきた」と、金融政策を理由し通貨を操作し益を得ているとする批判を全面否定。ドイツは米国に多くの直接投資を行っており、貿易での不均衡が相殺されているはずだとの意見もある。
トランプ大統領が掲げている政策、財政拡大、減税、規制緩和が実施されれば景気が上向くのは必至とほとんどのエコノミストが予想しており、ドルの上昇圧力になることは確実だ。もちろん、トランプ政権のドル高是正発言はドルの上昇を妨げる。しかし、現段階では米国政府のドル政策は依然、不透明。トランプ大統領が指名したムニューチン財務長官候補はまだ上院に承認すらされていない。
ムニューチン氏は承認に向けた議会証言で、「長期的なドル高」を支持する姿勢を示したものの、短期的にはドル高が経済の成長を抑制する可能性があると述べた。ただ、この発言は、議員のひとりが、トランプ大統領が計画している経済の支援策がドルを25%ほど押し上げる可能性があるとの分析に関する質問に対する回答である。単に、短期的なドル高のリスクを警告したわけではない。トランプ大統領はビジネスマン。通貨問題を交渉のレバレッジとする可能性もある。
ムニューチン財務長官が承認され、米国のドル政策が明確となるまでは、様々な憶測が飛び交いドルも乱高下が予想される。《SK》
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