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期待される超臨界地熱資源、従来予想以上に存在する可能性が
世界的な低炭素社会への移行の流れから地熱発電の重要性は近年飛躍的に増大している。日本やアイスランドなどの地熱資源が豊富な国においては、単位質量あたりのエネルギーが大きな超臨界水(温度 374℃以上,圧力 22 MPa 以上の水)が高温高圧の岩石の割れ目(き裂)のなかに存在する新しい地熱資源、いわゆる超臨界地熱資源の存在が注目されている。アイスランドにおいては近年、掘削により450℃の超臨界地熱資源の存在が確認されており、この新しい地熱資源を用いた場合の生産井一本あたりの発電量は従来型地熱資源を用いた場合(3~5 MW)よりも約一桁大きい(35 MW)と見積もられているという。
大陸地殻の大部分を構成する花崗岩質岩石は、深度約2km以上の高圧環境において、約360℃以上の温度になると塑性変形し、延性破壊する岩石に変化(脆性‐延性遷移)するため、そのような比較的軟らかい岩石からなる大陸地殻(延性地殻)は、水の流路となるき裂に乏しく、透水性が極めて悪いという仮説が存在していた。
今回、東北大学大学院環境科学研究科の渡邉則昭准教授、沼倉達矢氏(元修士課程学生)、坂口清敏准教授、岡本敦准教授、土屋範芳教授は、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センターの最首花恵研究員および米国地質調査所のSteven E. Ingebritsen研究員とともに、高温高圧下のき裂性花崗岩(流体流路となるき裂を有する花崗岩)に対する透水実験を通じて、これまで透水性が極めて悪いと予想された超臨界水(温度374℃以上、圧力22MPa以上の水)が存在しうるような高温高圧の花崗岩質岩石からなる大陸地殻であっても高い透水性をもつ可能性があることを明らかにした。
研究ではまず透水性測定により、圧力変化によるき裂の開閉挙動が弾性変形のみによるものから塑性変形をともなうものに変化する温度圧力条件を発見した。また塑性領域では、透水性は減少しやすいものの激減するほどではないことから,高透水性になる場合もあることがわかった。
さらに日本や米国などの複数の地熱地帯において過去に実施された掘削により示唆されていた高透水性地熱資源が存在可能な限界温度および圧力(深度)の組合せ条件が、新たに発見した弾性-塑性遷移応力曲線付近およびその近傍の塑性領域内に存在することを発見した。つまり、ある温度の高透水性地熱資源は、弾性-塑性遷移が生じる圧力(深度)よりもある程度大きい圧力(深度)まで存在可能であることがわかった。この発見により、高透水性の超臨界地熱資源は、温度約375℃~460℃、深度約2 km~6 km(圧力約30 MPa~100 MPa)の延性地殻内にも存在する可能性、つまり従来予想以上に存在する可能性があることが明らかになったとしている。(編集担当:慶尾六郎)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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