自動運転車が増えると強引に横断する歩行者が増える?

2016年11月2日 23:31

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記事提供元:スラド

交通の安全性を高めると考えられている自律走行車だが、その安全性を期待して道路を横断する歩行者が増加し、走行速度が低下するという見方もあるようだ。これについてカリフォルニア大学サンタクルーズ校のAdam Millard-Ball氏がゲーム理論を使用した検討を行っている(論文アブストラクトThe Registerの記事論文マニュスクリプト: PDF)。

Millard-Ball氏によれば、歩行者は道路を横断する際にチキンゲームをプレイしているのだという。人間のドライバーはあえて歩行者を轢こうとはしないため、十分な距離がある場合に歩行者が道路に出てくれば減速したり、停止したりする。しかし、ドライバーが脇見をしていたり、酔っていたり、ソシオパスであったりする可能性もある。道路を無理に横断すれば速く移動できるが、事故にあった場合の損失は自動車よりも歩行者の方が大きい。そのため、歩行者は状況を見て横断するかどうかを決めている。

これに対し自律走行車では脇見運転などの可能性がなく、人間のドライバーよりも交通規則を守って走行する。また、十分な距離があれば停止することが期待されるため、強引に横断する歩行者が増加し、自律走行車の走行速度は低下することになる。特に都会の住宅密集地では速度低下が著しくなり、自律走行車は乗客を住宅地の外側の幹線道路で降ろして駐車場所へ向かうことになる。その結果、都市密度をさらに上げることが可能となり、歩行者の活動を増やす結果にもつながるとのこと。

このほか、交通規則や道路設計の変更により横断を減らすシナリオや、コストが同様であっても速度を優先して人間の運転する自動車を選ぶ人が残るというシナリオも考えられるという。また、同じメーカーの自律走行車には道を譲り、他メーカーの自律走行車には道を譲らないといったメーカー同士の競争にも言及している。 スラドのコメントを読む | サイエンスセクション | セキュリティ | サイエンス | ゲーム | 交通

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