【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆米利上げ攻防の谷間◆

2016年9月10日 15:39

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記事提供元:フィスコ


*15:39JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(1):◆米利上げ攻防の谷間◆
〇米利上げ攻防の谷間〇

2日の米雇用統計は非農業部門雇用者数増が15.1万人、市場予想の18万人に届かなかったが、下振れは想定範囲内。7月分が上方修正(27.5万人増)され、3ヵ月合計で69.7万人(平均で23.2万人)増。9月の利上げ観測は高まらなかったが、12月利上げ観測を正当化するとの受け止めかた。

発表直後に市場は乱高下となったが、株高(約0.5%高)、債券安(10年物国債利回りは1.6075%)、為替は金利上昇に反応したと見られ、ドル高円安で一時104.31円を付けた。市場によって反応が異なるのは、投資家目線の差。株式市場は9月利上げ警戒のスタンスにあり、債券や為替市場は利上げ方向性を重視する立場にあるためと思われる。短期金利先物市場が織り込む9月利上げ確率は24%、12月までは57%であまり変わらなかった。

日米金融政策が揃うのは休日の影響で9月23日の市場。それまで強弱感を織り交ぜながら綱引き相場が続くと思われる。米株はNYダウで18500ドル前後の攻防、債券相場は10年物国債1.6%超の利回りが定着するか、為替はドル・ロングのポジション解消が進むかどうか(円ロングはドル・ロングのヘッジで積み増されていると見られ、ポジション解消は円売り要因になると見る)が焦点。ジワリ、円売りが進行し105円前後で落ち着けば、日本株は戻りを試す局面と考えられる。ドル建て日経平均163.4ドル(2日)×105円=17157円が目安で、17000~17500円のボックス定着が出来るかどうかが焦点と考えられる。中長期的には17500~19000円ゾーンへ移行して行くシナリオ模索の局面と位置付けられる。


〇原油相場に注目〇

G20で最も注目されたのはプーチン露大統領とサウジのサルマン副皇太子の会談だ。直前の2日にプーチン大統領は、OPECとロシアが原油増産凍結協議で合意に達することを望むと述べ、イランとの妥協が必要との認識を述べた。原油価格安定を重視し、実質的にサウジに増産凍結を求め、イランとの調整への橋渡しを行う姿勢だ。

サルマン皇太子は中国、日本と異例の積極外交を展開。随行した腹心のエネルギー相が日経インタビューに「アラムコ、東証上場」をぶち上げた(17年に国営石油会社アラムコ株の5%未満を売り出す予定。アラムコ株は時価総額2兆ドルとも4兆ドルとも言われる巨大案件)。市場では、アラムコ株式公開を成功させるために、原油相場50~60ドル/バレルを目指すのではないかとの憶測が出始めた。

先週の原油相場は米原油在庫の大幅増で大幅下落。週末はプーチン発言で戻したが週間6.7%安。過去最高水準に膨らんだ先物買い残の調整を余儀なくされてきたと見られる(2日WTI終値44.44ドル/バレル)。思惑通り、戻り相場となるか、先進国のインフレ観に影響しよう。

G20前に開催された東方フォーラムで、ロシアは日本を中心に極東での石油・ガス供給増の姿勢を示した。ロシアにも国営石油会社民営化の動きがある(8月16日に中堅のバシネフチの政府保有分売却が延期されたが、これは派閥争いが原因とされる。最大会社ロスネフチへの日本企業出資の思惑が出ている)。各国の利害関係は複雑で、ロシア、サウジの思惑が揺れ動く公算が大きい。


以上

出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/9/05号)《HK》

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