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一尾仁司の「虎視眈々」:◆「香港は大丈夫か」◆
*18:03JST 一尾仁司の「虎視眈々」:◆「香港は大丈夫か」◆
●香港議会選迫り、独立ムード再燃を注視●
正式なニュースとなっていないようだが、香港最大財閥の長江実業率いる李嘉誠氏が香港セントラル地区にある73階建てビルを売りに出していると言う(サウスチャイナモーニングポスト8/24付)。本丸とも言うべきビルで、邦貨換算5000億円程度の物件。李嘉誠氏は13年までに中国本土・北京、上海、広州などの保有不動産を全て売却、欧米に資産を振り向けた。その後の中国経済の変節ぶりを予測したとされる。今回も、いよいよ香港から逃げ出す構えだと噂される。
中国本土でのG20サミットの影に隠れているが、9月4日香港立法会選挙が行われる。7月30日に締め切られた立候補者は89人(直接選挙枠35人、他・香港民族党など)など6人が出馬を認められず、水面下で不満が燻る。
14年の「雨傘運動」を経て、民主化勢力が伸長したが、親中派で固められる職能枠で、大勢は変わらないと見られている。香港選管は立候補に際し、香港が中国に帰属することなどを定めた香港基本法支持の「確認書」署名を義務付けたが、民主派勢力や本土派は拒否したとされる。8月21日に民主派グループによる小規模な抗議デモ(主催者発表1300人)が行われているが、投開票は中国G20サミットと重なるため、中国政府は厳戒態勢で臨むと思われる。24日には台湾・民進党関係者3人の香港入境が拒否された。香港と台湾の独立ムード連携に極度に警戒感を示す。
香港ハンセン指数は、今のところ順調だ。昨年後半以降、中国株暴落に連動し、18000ポイント台まで下落したが、春先ボトムに立ち直り23000ポイント前後に上昇している(8/25終値22814.95)。香港ドルと米ドルのペッグ制で為替リスクが無い点が寄与している(かつては、日本株の比較対象として注目されたこともある。仮に日経平均が同じ動きをしておれば、19000~20000円水準に該当すると思われる)。ただ、24日スイス時計工業会が発表した輸出統計(中国の統計のような恣意的な操作、在庫操作などは入らないと見られる)によると、7月香港への輸出額は前年同期比32.7%減。香港での「爆買い」、あるいは香港経由での流通に何らかの変化が生じている公算が大きい。
香港情勢には英国の態度も影響する。議会選後に民主化・独立ムードが再燃するか、東アジア情勢に影響する隠れた要素として注視したい。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(16/8/26号)《TM》
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