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パナマ文書は大山鳴動して鼠一匹
*07:58JST パナマ文書は大山鳴動して鼠一匹
多数の大企業や個人が不当な課税逃れをしていたとして、「パナマ文書」が世界で大騒ぎとなっている。マスコミの報道はパナマ文書に載っている企業や個人はそれだけで、どうやら不当な課税逃れをしていた疑いが強いというトーンになっている。「合法的な脱税」といったような矛盾をはらんだ言葉づかいも見受けられた。
しかし、脱税は違法なのであって、もし合法的な行為であればそれは単なる節税ないし「違法ではない租税回避」にすぎない。現時点では、合法違法全てひっくるめて租税を回避することはけしからんという風潮になっているが、それは「何かしら不平等な課税回避が行われているのではないか」といった漠然とした思いを背景とした倫理的・感情的な非難のようにみえる。
海外ではパナマ文書に載っていることにより非難が集まり、公人が辞職するケースも出ているが、これも何が違法な脱税にあたる行為だったのか判然としない。
パナマ文書に企業名や個人名が載っているだけで犯人を見つけたような大騒ぎをしているのは妥当ではない。本来的には国内法に照らして違法な脱税に当たれば取り締まるだけで何も特別なことはない。
それぞれの国の国内法で違法な脱税行為については当然規定がある。日本を例にすると、日本の名だたる上場企業がパナマに子会社を設立して、大規模な脱税ができるかというと、事はそのように簡単ではない。既にタックスヘブン対策税制がとられているし、大規模な資金の移動等が当局に見逃されるはずもない。そのような行為に及んだ場合のリスクも巨大である。
今回のパナマ文書については、各国が租税回避を阻止する為、国内法の規制を強化するなどの契機になる可能性はある。ただ、だからといって既に行われた合法的な行為について遡及的に課税したり処罰することはできない。先進国では大原則として、税や刑罰については当該行為よりも先に法制化しておく必要があるのであり、遡及効は認められないのである。
今回の大騒ぎは結局のところ、大山鳴動して鼠一匹といった事態になるのではないだろうか。《YU》
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