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産業機器分野のワイヤレス給電システムに、世界初の革新的な技術が登場
株式会社ダイヘンは3月末、同社独自のワイヤレス給電用高周波電源システムを用いて、産業機器分野では世界初となる磁界共鳴方式のワイヤレス給電システムを開発。第一弾としてAGV向けのシステムの販売を開始した。 工場のオートメーション化等に貢献し、産業機器分野でのワイヤレス給電導入の起爆剤になるか期待がかかる。[写真拡大]
2016年は、ワイヤレス給電が注目される年になりそうだ。ワイヤレス給電技術への関心は、スマートフォンなどのモバイル機器への給電を中心に2013年頃から急速に高まっているが、昨年あたりから、いよいよ本格的な普及の兆しが見えはじめている。
市場調査会社の富士経済の予測では、ワイヤレス給電モジュールの国内市場は2025年には2012年比で96.1倍となる673億円規模を見込んでいる。また、ワイヤレス給電市場の拡大傾向は世界規模で、米国の市場調査会社HISが2014年に発表したリポートの中でも、モバイル機器向けのワイヤレス給電システムの市場規模が2018年までに40倍に拡大することが予測されている。
さらに、今後は大型機器用のワイヤレス給電市場が大きく広がろうとしている。産業用機器市場では、工場内の部材運搬用台車などに対するワイヤレス給電は既に実用化され普及が見込まれているし、電気自動車(EV)用のワイヤレス給電も試験段階にある。
そんな中、今度は大阪の電気機器メーカー・株式会社ダイヘン<6622>が、産業機器分野では世界初となる磁界共鳴方式を採用したワイヤレス給電システム「D-Broad」シリーズを発表、その第一弾となる無人搬送台車(AGV)用システム「D-Broad Core」の販売を開始したことで大きな注目を集めている。
無人搬送台車(AGV)用の充電には、いくつかの方法がある。従来の鉛蓄電池を交換する方法は、人手が不可欠であることと交換時の事故など24時間無人化と安全面で難点がある。ケーブルで充電する方法も同様人手が欠かせない。また接触式の自動充電装置も使用されているが、接点の接触不良などによる充電不足や事故の発生が懸念されている。こうした制約を解消する方法がワイヤレス給電方式である。
ワイヤレス給電には、電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界結合方式、マイクロ波方式などがあるが、大電流を必要とする産業機器分野においては、これまでは電磁誘導方式が主流だった。しかし、電磁誘導方式には、送受信デバイス間の距離が10mm未満でなければならない、厳密に位置決めをしないと損失が大きいなど多くの難点があった。
これに対して同社の磁界共鳴方式を用いたワイヤレス給電システムの最大のメリットは、位置ズレ許容範囲が圧倒的に広い点だ。「D-Broad Core」では、送受電コイル間の距離30㎜±10㎜、AGVの停止位置±10㎜を許容してシステム効率85%以上という業界最高水準の安定した高効率給電を実現した。簡単に言えば、送受信デバイス間の位置が、所定の充電位置から横(左右)に10㎜、前後に10㎜ずれても問題ないということで、厳密な台車の位置決めが緩和されるのできわめて実用的である。また、蓄電デバイスとして、鉛蓄電池の替わりにキャパシタユニットを採用することで大電流による急速充電が可能となり、台車の荷物の積み下ろしの短い時間に充電ができる。同時に、鉛蓄電池への有線充電と比較するとエネルギーロスが約26%も低減されるため、電気代を大幅に節約できることも大きなメリットだ。
以上の特長から、システムの構成次第では24時間無人運転が可能で、工場の自動化による労務費の削減はもちろんのこと、充電忘れ、事故防止など安全面にも大きく貢献する。
同社の共鳴方式によるワイヤレス給電システムは、半導体製造装置向け電源システムで培った高周波回路設計技術と、溶接機やパワーコンディショナー向けで培った独自の大電力電源の設計及び制御技術を融合することによって実現できたもので、「D-Broad」シリーズの発売に合わせて、新たにワイヤレス給電システム部を新設。創立100周年を迎える2019年までに売上高50億円達成を目指して、全社を挙げて取り組む姿勢をみせている。
「D-Broad Core」の実物は、4月20日(水)~22日(金)に幕張メッセで開催予定のテクノフロンティアで発表及び展示される予定をしている。
磁界共鳴式のワイヤレス給電システムは、実用化にあたって多くの利点があり、AGV充電やEV充電の普及に貢献する技術として期待される。(編集担当:藤原伊織)
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