NYの視点:FOMCはタカ派姿勢を弱める、6月の追加利上げ観測後退

2016年3月17日 07:14

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記事提供元:フィスコ


*07:14JST NYの視点:FOMCはタカ派姿勢を弱める、6月の追加利上げ観測後退

米連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想通り政策金利であるFF金利誘導目標)を0.25-0.50%に据え置くことを決定した。

年初から原油価格が一段と下落したこと、世界経済、金融混乱にもかかわらず、最近発表された指標はインフレ率の上昇や、製造業の改善の兆候を示した。このため、FOMCは3月会合で、6月の追加利上げに向けた地ならしをするとの見方も少なくなかった。しかし、声明やイエレンFRB議長の記者会見では景気の拡大にもかかわらず、世界経済の悪化が見通しに大きく影響したことに言及。タカ派姿勢を大幅に弱めた。

まず、1.声明の中での大きな変更は「世界経済の展開は依然リスクとなる」との文言を追加。さらに、イエレンFRB議長は連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「中国の成長は予想通り鈍化、日本の景気縮小は驚き」「カナダやメキシコは原油安が経済に影響」「ユーロ圏の成長もいくらか弱い兆候」と具体的に示した。

また、イエレン議長は各国の金融政策には「波及要因がある」ため、「波及要因を考慮する必要がある」とも言及。20か国財務相・中央銀行総裁会議(G20)を終えたばかりで、新興諸国市場などへの米国利上げの影響を警戒している可能性もある。

2.連邦準備制度理事会(FRB)は1月連邦公開市場委員会(FOMC)の声明のなかで、リスクバランスに関する言及を削除した。今回の会合でもリスクバランスの言及を回避した。事前にエコノミストはリスクバランスに関する言及が再開された場合、タカ派寄りとなると見ていた。しかし、イエレンFRB議長によると、FOMCメンバーは中立、または下方のリスクを指摘したという。メンバーが市場より景気に対し慎重な見方に転じたことが明らかになった。

3.米連邦公開市場委員会(FOMC)が四半期ごとに発表するメンバー予測で国内総生産(GDP)見通しが、前回12月予測から下方修正された。米国経済の見通しは変わらないが、「世界経済の見通しの悪化は我々の見通しに影響する」とイエレンFRB議長が指摘している。同時に金利見通しも年2回の追加利上げに下方修正された。メンバーは現状で、2016年を通し、政策金利であるFF金利誘導目標は1%には達しないと見ている。

・米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバー予測
「GDP:2016年2.2%(12月2.4%)、2017年2.1%(2.2%)」
「コアCPI:2016年1.6%(12月1.6%)、2017年1.8%(1.9%)」
「FF金利:2016年末0.9%(2回の追加利上げ)(12月1.4%、4回)、2017年末1.9%
(12月2.4%)、長期3.25%(12月3.5%)」

結果を受けてFOMC前、50%以上織り込まれていた6月の利上げ確率は再び50%を割り込み38%となった。ドルも連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げ軌道修正で、上昇が限定的となる可能性がある。《NO》

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