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一尾仁司の「虎視眈々」:堰(せき)は破られた
*19:02JST 一尾仁司の「虎視眈々」:堰(せき)は破られた
〇世界的株急落、円高進行、波乱続く
東京市場の休日が狙われたとも見れなくないが、イエレンFRB議長の議会証言がほぼ想定内だったことを受け、投機筋が一斉に攻勢を掛けた印象が強い。日銀が最も警戒した円高が進行、一時110.99円/ドルを付け、その後介入思惑を交え113円台に戻し、朝方は112円台半ばの攻防と目まぐるしい。115円の防衛ラインを底抜けるとチャート的なフシ目が乏しく、110円が心理的抵抗ライン、大きなフシ目は105円と見られていただけに、一気に具現化されつつある格好。当初は株売りに伴う円買戻し(円安相場では株買いに円売りヘッジを伴う)と見られていたが、その領域は既に大きく超えてしまった印象だ。
日銀のマイナス金利策の失敗との見方があるが、確かに流動性を高めた面はあるが、金融政策では効かない市場崩落と受け止める方が妥当だ。(余裕ある国の)財政出動などに焦点がシフトして来よう。
欧州金融株が最も激しく売られている。発端はドイツ銀行だったが、11日は仏ソシエテ・ジェネラルが予想下回る決算で大幅安、クレディ・スイス(年初来下落率は43%に達し、ドイツ銀の39%を上回る)なども急落し、上場来安値か、それに近い水準に多くの銀行株が売られている。
ドイツ銀はCoCo債(偶発転換社債)の利払い懸念を契機に売り込まれたが、背景には10年に買収したドイツ・ポストバンクの失敗(東芝が06年に買収したウェスチングハウスで失敗し、不正経理でカバーしようとしたのに類似)がある。評価損計上は待ったなしの状態で赤字決算が続く恐れがある。
欧州銀全体に広がったのは、ギリシャを筆頭に南欧の不良債権問題が一向に進展せず、欧州経済を底上げしてきたオイルマネーの急縮小が銀行部門の急縮小も招いている点が大きいと見られる。単純にオイルマネーが欧州株を売るだけでなく、経済・金融そのもののビジネスモデルが崩壊し掛かっていると見れる。加えて、ラストリゾートと見られたドイツの国力急低下が加わった。大量難民問題での混乱で政治体制が揺らぎ、VW不正事件、鉄道大事故など弱り目に祟り目状態。11日の下落率はドイツ株2.93%に対し、仏4.05%、イタリア5.63%、スペイン4.88%、ポルトガル4.47%。3月のECB追加緩和が予想されているが、ドイツが扱ければECBの支える力は弱いと見られている。
ウォール街の格言では「マーケットは最大限の人々を巻き込んで、最も行ってもらっては困る方向へ行く習性がある」。リーマン後の超金融緩和が流動性を大幅に高め、金融規制強化で資金の流れを歪めてきた感がある(リーマン前の金融バブルを生んだ構造が正しいとは言えないが)。
調整が米大統領が替わる前年、2000年、2008年に続き起こっているのも偶然でなかろう。ましてや次の米大統領は混沌、方向性をイメージできない状態にある。
16000円の堰(せき)を破られた日経平均は、13000~16000円ゾーンに落ちたと考えられる。中値の14500円は1990年代に下値抵抗ラインとなったところ。アベノミクスで比較的短期に突破してきたので、直近ではフシ目と見られていないようだが、抵抗力を試すと想定する。比較的短期に16000円を回復できれば、辛うじて「先進国相場」を維持していくパワーが残っていると考えられる。
なお、新たな脅威は、春節明け後の中国市場。いち早く再開した昨日の香港株は3.85%の下落。休みが長い分、下げ余地を溜めている可能性がある。生産能力調整(大規模な工場閉鎖など)が本格化する可能性が指摘されている。
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(2/12号)《FA》
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