マラリア原虫のタンパク質構造を解明―抗マラリア薬物療法の開発に期待=OISTウルフ・スコグランド氏ら

2016年1月29日 22:48

印刷

マラリア原虫に感染した赤血球(pRBC)の細胞膜上にあるIgM抗体(紫色)とPfEMP1タンパク質(黄色)が結合し、正常赤血球を誘導しロゼットを形成する。(写真提供:OIST)

マラリア原虫に感染した赤血球(pRBC)の細胞膜上にあるIgM抗体(紫色)とPfEMP1タンパク質(黄色)が結合し、正常赤血球を誘導しロゼットを形成する。(写真提供:OIST)[写真拡大]

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)のウルフ・スコグランド教授らによる研究グループは、熱帯熱マラリアの病原体であるマラリア原虫(P. falciparum)のひとつのタンパク質と、それに対して感染初期段階の生体防御反応を担う抗体分子が結合した三次元構造を明らかにした。この成果は、抗マラリア薬物療法の開発につながることが期待されるという。

 熱帯熱マラリアは、マラリア原虫を媒介するハマダラカ(Anopheles属)という蚊に刺されることによってヒトに感染する。マラリア病原体には、その感染力を高めるための戦略の1つとして、感染赤血球を正常赤血球が囲んで花びら状の配列を形成する「ロゼット形成」がある。ロゼット形成に重要な役割を担っているのが、熱帯熱マラリア原虫赤血球膜タンパク質(PfEMP1)で、このタンパク質はPfEMP1タンパク質は感染赤血球の表面に発現し、感染初期の生体防御機能を担う抗体の1つであるIgM抗体を巧みに操る。

 今回の研究では、三次元可視化技術によって、IgM抗体が1~2個のPfEMP1タンパク質に結合し、感染細胞の表面にブーケ状の結合体を形成する様子を可視化することに成功した。その結果、PfEMP1はアルファベットのCの形をした堅固なタンパク質構造であること、そしてIgMは、拡張形、鐘形、カメ形という三種の形態をとることがわかった。

 今後は、本研究成果が、患者に苦痛を与えることなく感染赤血球のロゼットを破壊・排除を可能にする抗マラリア薬物療法の開発に役立つと期待されている。

 なお、この内容は「Cell Reports」に掲載された。論文タイトルは、「Architecture of Human IgM in Complex with P. falciparum Erythrocyte Membrane Protein 1」。

関連記事