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ヤマハ発動機の新中期経営計画 成長戦略に1300億円を投資し2兆円企業を目指す
12月15日、ヤマハ発動機は2016から3年間の「新中期経営計画」を発表した[写真拡大]
■3年後、2018年の目標は売上高2兆円、営業利益率10%水準
12月15日、ヤマハ発動機<7272>は2016から3年間の「新中期経営計画」を発表した。2018年のあるべき姿を「ひとまわり・ふたまわり大きな『個性的な会社』へ」と定め、「売上高2兆円・営業利益率10%水準」の達成を目指している。
経営の数値目標は連結ベースで売上高2兆円、営業利益1800億円、営業利益率9.0%、自己資本比率42.5%、ROE(3年平均)15.0%、コストダウン(3年間トータル)600億円とした。経済環境としては、先進国は堅調な景況感が3年間続き、新興国は現状の通貨安、市場低迷が2018年には一部の市場で回復すると見込んでいる。2018年時点の想定為替レートはドル円115円、ユーロ円130円と現状よりも円高で、為替メリット抜きで目標の達成を目指す。
新中期経営計画の中身を要約すれば、3つの事業領域で4つの成長戦略を推進し、ブランド力を十分に活かして、コストダウンを図りながら既存事業の「稼ぐ力」を高めていく。安定的な財務基盤を確立し、積極的な成長投資を行う一方、株主還元も強化する。
■収益性重視の経営戦略、効率性重視の財務戦略
経営戦略の「3つの事業領域で4つの成長戦略」の3つの事業領域とは、「豊かな生活」「楽しい移動」「人・地球・社会にやさしい知的技術」。4つの成長戦略とは「ひろがるモビリティの世界」「マリン世界3兆円市場への挑戦」「ソリューションビジネス」「基盤技術開発」である。
「稼ぐ力」の大きな源泉として挙げるのが「ブランド力」で、技術、デザイン、マーケティングが三位一体となって商品競争力を発揮していく。2018年に投入するニューモデル数は270で、2015年の250よりも多い。コストダウンでは購入材料費の5%圧縮を数値目標として掲げている。そのためにプラットフォームモデルの競争力強化、グローバル調達レイアウトの取り組み拡大、ヤマハ独自の手法「理論値生産」に加え「理論値物流」という概念も新たに打ち出している。
グローバル経営というテーマでは海外生産比率をさらに高め、海外の現地法人や拠点では現地人の幹部や女性の管理職登用を増やして「人づくり」に注力していく。そのコアポジションの現地化率は45%から60%まで高めていく。
2018年のその先を見据えて、新たなプロジェクトで「個性ある多様性」を創る「ソリューションビジネス」への挑戦も行う。
財務戦略の要点は、限界利益、投資効率、事業効率で計測できる既存事業の「稼ぐ力」を高めることで、安定的な財務基盤を築くこと。それにより新しい成長投資を行うことができ、株主還元も積み増すことができる。
安定的な財務基盤構築についての数値目標は、自己資本比率42.5%、ROE15%、1株あたり利益(EPS)300円以上。そうした強い財務基盤を確立すれば既存事業の効率化に取り組める一方で、新たな成長戦略にも資金を投入できる。新中期経営計画では投資に600億円、研究開発に700億円の合計1300億円の新規枠を設けている。投資では戦略的なM&Aも含めて検討するといい、研究開発では、「四輪進出」の話題が先行しているが2020年頃の製品化を目指す四輪車の開発や、次世代ロボット技術の開発も含まれる。
販売ローンの提供などで既存事業を支援する金融ビジネスの拡大も大きなテーマ。すでに金融子会社を設立した北米市場を中心に推進して、2018年に販売金融債権残高3200億円を目指す。株主還元については配当性向の数値目標を従来の下限20%から「30%を目安」に変更した。
■安定収益体質を築く二輪車事業世界ナンバーワンを目指すマリン事業
ヤマハの効率性重視、収益性重視の経営戦略が最も強く現れているのが主力の二輪車事業である。数量の規模を追わず、強い商品競争力と高い経営効率で安定収益体質を築いていく方針。数値目標は売上高1兆3000億円、営業利益740億円。重点地域は「先進国」「アセアン」「インド」「ブラジル・中国」の4地域で、全体の約70%をカバーする。
先進国市場でのキーワードは「ブランド」。「YAMAHA」の強いブランド力を活かしながら、構造改革を進めて安定収益体質を築き、モデルブランドをさらに輝かせる。商品ラインナップは、コミューター(日常)から趣味、スーパースポーツ(レース)までの各カテゴリーでそれぞれ個性的なブランドを確立。販売ネットワークは顧客の嗜好に合わせて「日常」「趣味」「レース」ごとに複線化し、マーケティングではスクール、イベントなど「モノからコトへ」をテーマに進めていく。
インドネシア、ベトナムを中心とするアセアン市場でのキーワードは「プラットフォーム戦略」。商品開発(プラットフォーム)のコストダウンを進め、モデル数を増やす。経済成長で顧客が多様化しており、早く、安く、旬の商品を届けることで新しい価値を提供し、二次販売網を700店から2000店に拡充。インドネシアでは現状で落としているシェアを回復させ高シェア、高収益性を確保する。
インド市場でのキーワードは「拡充」。新興国戦略モデルを投入してボリュームのあるマス領域で商品ラインナップの拡充を図り、顧客との接点を強化するために地方部を中心に販売網を1500店から2500店まで拡充していく。シェアアップ、数量の拡大を収益の安定につなげる。
ブラジル・中国市場でのキーワードは「損益分岐点」。市場が成熟し不確定要素が高い地域なので、損益分岐点を下げる取り組みに注力する。
もう一つの基幹事業、マリン事業のメインテーマは「世界3兆円市場への挑戦」。すでにシェアの10%を取っている売上高3000億円、営業利益率20%の水準から、さらに成長できるビジネスモデルを構築する。数値目標は売上高3400億円、営業利益700億円。船外機が得意なヤマハはこれまで「エンジンサプライヤー」のイメージが強かったが、それを「システムサプライヤー」に変える。具体的には拡大が続く北米市場でボートビルダーとのアライアンスを強化し、エンジンからその周辺機器へ、さらにボートの艇体へと向かう戦略を推進する。それによりマリンでも幅広い事業価値を提供できるようになる。
マリン事業で目指すのは、強固なグローバル・ナンバーワンブランド「YAMAHA」の確立。それは「プロが納得するブランド」「上・中級顧客にとってなくてはならないブランド」「初級顧客が憧れるブランド」だとしている。商品への絶対的な信頼性、システムの信頼性、ビジネスパートナーとしての信頼性、市場に密着したグローバルな開発・製造・販売・サービスのネットワーク、事業領域も商品も幅の広さを持っているシステムサプライヤーとしての総合事業力の3つの力で、圧倒的に強いブランドを築いていく。
■RVを「第3の基幹事業」に成長させIMはより高収益な事業へ
特機・その他の各事業も、個性的なビジネスモデルの構築を目指し、それぞれ2018年の数値目標を設定している。トータルでは売上高3500億円、営業利益率10%である。
RV事業のテーマは、二輪車、マリンに続く「第3の基幹事業」に成長させること。数値目標は売上高2000億円、営業利益率10%。メインは市場の拡大が続いているROV(オフロード・ビークル)で、北米シェアを現在の7%から12%に伸ばすために「ピュア・スポーツ領域」の商品群を拡大させるなど、差別化、高付加価値化を徹底させた商品戦略を展開していく。
IM事業のテーマは、強みを活かしたさらなる高収益化。数値目標は売上高600億円、営業利益率20%で、世界の表面実装機市場で現在8%のシェアを13%に伸ばす。開発・製造・販売が一体化したスピード感のある経営、日立ハイテクから部門を吸収したシナジー効果で、強みのある自動車、家電・LED、デバイスの各領域で市場の攻略を進める。
UMS事業のテーマは、グローバルな成長への挑戦。数値目標は売上高100億円。無人ヘリは2016年からカリフォルニア州のワイン産地でブドウ畑の農薬散布用に採用されるが、今後もタイ、EUなど世界の市場を積極的に開拓し、2018年に機体販売台数国内280台、海外150台を目指す。ペイロード、自律化、安全対策などの技術開発を進め、ソリューションも加えた総合的な価値を提供できるよう、ビジネスモデルの転換を図っていく。(編集担当:寺尾淳)
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