長期記憶と短期記憶を担当する脳の場所を画像化―東大・今水寛氏ら

2015年12月13日 21:41

印刷

実験参加者がfMRI装置の中で行った運動学習課題の概要を表す図。学習課題は2種類あり、課題①では、正確に右斜め上(−40º:青の矢印)方向にジョイスティックを動かし、課題②では左斜め上(+40º:赤の矢印)方向に動かした。(東京大学などの発表資料より)

実験参加者がfMRI装置の中で行った運動学習課題の概要を表す図。学習課題は2種類あり、課題①では、正確に右斜め上(−40º:青の矢印)方向にジョイスティックを動かし、課題②では左斜め上(+40º:赤の矢印)方向に動かした。(東京大学などの発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の今水寛教授らによる研究グループは、短期と長期の運動記憶が、脳の異なる場所に保存される様子を、世界で初めて画像として捉えることに成功した。

 脳内には短期から長期までのさまざまな時間スケールの運動記憶が存在すると言われている。しかし、脳のどの場所が短期の記憶を担当し、どの場所が長期の記憶を担当しているのかは分かっていなかった。

 今回の研究では、実験参加者21名にfMRI装置の中で、ジョイスティックを操作してもらう実験を行った。その結果、数秒で学習して数秒で忘れる非常に短期的な記憶には、前頭前野や頭頂葉の広い場所が関係していること、数分から数十分で学習して忘れる中期的な記憶は、頭頂葉の中でも限られた部分が関係していること、1時間以上かけて学習し、ゆっくり忘れる長期的な記憶は小脳が関係すること、などが明らかになった。そして、早く学習して早く忘れるタイプが2つ、遅く学習していつまでも記憶するタイプが1つ、中間的なタイプが1つ、合計4タイプに分類できることが分かった。

 今後は、運動学習に限らず、外国語や数学などさまざまな種類の学習において、同様の方法で、短期と長期の記憶の場所や時間スケールの違いを解明することで、効率的な学習プログラムを開発することに役立つと考えられている。

 なお、この内容は「PLOS Biology」に掲載された。論文タイトルは、「Neural substrates related to motor memory with multiple timescales in sensorimotor adaptation」。

関連記事