自然リンパ球によるアレルギーの抑制機構を解明―新治療法の開発に期待=理研・茂呂和世氏ら

2015年12月3日 17:04

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IFNとIL-27によるILC2sを介した自然アレルギー抑制機構の概要を示す図(理化学研究所の発表資料より)

IFNとIL-27によるILC2sを介した自然アレルギー抑制機構の概要を示す図(理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]

 理化学研究所の茂呂和世チームリーダーらの共同研究チームは、自然リンパ球によって発症するアレルギー炎症を抑制するメカニズムを解明した。この成果は、アレルギーが発症したり症状が悪化するメカニズムの解明や新しい治療法の開発につながることが期待されるという。

 同研究グループは、2010年にナチュラルヘルパー細胞(NH細胞)を発見し、それ以降さまざまな類似する細胞が報告されている。現在これらは「2型自然リンパ球(ILC2s)」と呼ばれており、寄生虫排除と同じメカニズムによって、T細胞やB細胞、IgEに依存しない新たなアレルギー性炎症「自然アレルギー」の発症や病態に関わることが明らかになってきた。

 今回の研究では、共同研究チームは、ILC2sの抑制メカニズムを解明するために、ILC2s表面に発現しているサイトカイン受容体を詳しく調べたところ、インターフェロン(IFN)とインターロイキン-27(IL-27)がILC2sの増殖とサイトカイン産生を強く抑えることが明らかになった。

 また、IFN受容体を欠損させたマウスを寄生虫感染させ、ILC2sによる炎症がどうなるかを調べたところ、内在性のIFNがILC2sによる炎症の収束に重要であることがわかった。

 さらに、IL-33誘導性の喘息モデルマウスを用いてIFNやIL-27がILC2sによるアレルギー症状を抑えることができるかを調べたところ、IL-33とともにIFNかIL-27を投与したマウスの肺では、ILC2sの増加が強く押さえられ、好酸球浸潤や粘液過剰分泌、気道過敏性が抑えられることが明らかになった。

 これらの結果から、寄生虫感染ではIL-33によってILC2sが活性化し、積極的な排虫を促すが、虫体が体外に排出された後もILC2sが活性化し続けることは生体にとって危険な状態になるため、IFNやIL-27が出されることによって虫体の排出とともに炎症が収束することが明らかになった。また、IL-33とILC2sに依存的なアレルギー性炎症はIFNやIL-27によって抑制することができることも明らかになった。

 ILC2sは皮膚や腸管、肺などアレルギー疾患と関わりの深い部位に存在し、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、喘息など多様なアレルギー性疾患に関わっていると考えられることから、研究グループは、今回の成果をもとに各組織のアレルギー性炎症のメカニズムを解析していくことで、アレルギー性疾患の画期的な治療法開発につながることが考えられるとしている。

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