長期記憶形成に重要な脳内の神経接続を発見―東北大・市之瀬敏晴氏ら

2015年11月21日 20:04

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フィードバック回路の顕微鏡写真(左)と、フィードバック回路が長期記憶を形成するモデルを示す図(右)。(東北大学の発表資料より)

フィードバック回路の顕微鏡写真(左)と、フィードバック回路が長期記憶を形成するモデルを示す図(右)。(東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学の市之瀬敏晴(日本学術振興会特別研究員)らによる研究グループは、ショウジョウバエの長期記憶形成に重要な脳内の神経接続を発見した。

 一般に、長期に渡って情報を保存する「長期記憶」の形成のためには、何度も反復学習を行う必要がある。しかし、毒や食べ物といった生存に特に重要な情報は、一回の学習で長期記憶が形成されることがあることが知られている。

 今回の研究では、ショウジョウバエを用いてこの神経回路メカニズムを解明した。ショウジョウバエは、砂糖を報酬として用いた一回の匂い条件付け学習により長期記憶を形成する。これまでの研究で、砂糖による報酬情報は特定のドーパミン神経を通してキノコ体と呼ばれる神経構造に伝達されることが明らかとなっていたが、今回、キノコ体はドーパミン神経からの報酬情報を受け取るだけでなく、別の神経を介してドーパミン神経を制御する「フィードバック回路」を形成し、このフィードバック回路が長期記憶の形成と安定化に重要であることを見出した。

 これらの結果から、砂糖報酬という重要な情報がフィードバック回路によって一定時間「保持」され、それが長期記憶を形成・安定化することが示唆される。

 ヒトの脳でもドーパミンが脳の報酬情報に深く関わっており、研究グループは、今回の成果が、選択的な長期記憶障害のメカニズムのモデルになるとしている。

 なお、この内容は「eLIFE」に掲載された。論文タイトルは、「Reward signal in a recurrent circuit drives appetitive long-term memory formation」。

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