【メガバンクの4~9月期決算】夏前まで収益を支えてきた海外業務、株式売却益、投信販売が、明らかに変調している

2015年11月16日 12:38

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記事提供元:エコノミックニュース

 11月13日、三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>、三井住友FG<8316>の3大メガバンクが4~9月期(第2四半期/中間期)決算を一斉に発表した。4~6月期の時点ではみずほの四半期純利益以外の項目が全て2ケタの増収増益とメガバンクの業績は好調だったが、4~9月期は三井住友FGが最終減益になり、銀行本業の儲けを示す実質業務純益は三菱UFJと三井住友FGが減少に転じるなど、夏場を境に明らかに変化している。

 その要因はやはり中国やアジア新興国の経済の変調が大きく、大きな収益源だった海外業務で融資が頭打ちになっているほか、リスク管理債権が増加して貸倒引当金の戻り入れ益が減少し、与信関連費用がかさんで利益を圧迫するという影響も現れた。出資先の海外の金融機関の業績が悪化してその株価が下がり、減損損失を計上するケースも出ている。かといって国内業務は日銀のゼロ金利政策が続き、金融機関間の貸出競争が激しく貸出利ざやが縮小していく傾向に変わりなく、この先も海外業務に頼らざるをえない。8月以降の株価低迷で株式売却益が大幅に減少したところがあるほか、非金利収支の手数料収入源、投資信託の販売にも陰りが出ている。

■三井住友は減損損失計上や株式売却益激減で2ケタ減益に


 4~9月期の実績は、三菱UFJは経常収益8.3%増、経常利益2.1%増、中間期純利益3.6%増の増収増益。中間配当は前年同期と同じ9円とした。三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行2行合算の実質業務純益は1%減の5761億円。出資先のモルガン・スタンレーの業績が堅調で、持分法投資利益が増加して増益に寄与したが、前期の好業績に貢献したアジアでは貸出残高が4~9月で約1%減少しており、経済の減速でつまづいたリスク管理債権も増えた。それでも海外業務全体では貸出を伸ばしている。

 みずほは経常収益8.2%増、経常利益6.8%増、中間期純利益8.1%増の増収増益。中間配当は前年同期比0.25円増の3.75円とした。みずほ銀行、みずほ信託銀行2行合算の実質業務純益は5%増の3663億円。増収増益の要因は、英国のRBS(ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド)のアメリカ事業部門の人員を引き受けてその債権を買い取り、社債の発行やM&Aに伴う収益が上積みされたこと。傘下2行の株式売買に関わる利益額が前年同期比で3.7倍に拡大したことも寄与した。国内でも海外でも非金利収入の増加が金利収入の低迷を補っている。

 三井住友FGは経常収益1.2%増、経常利益19.1%減、中間期純利益19.1%減の増収、2ケタ減益。中間配当は前年同期比15円増の75円とした。三井住友銀行単体の実質業務純益は8%減の4041億円。業績に打撃だったのが出資先のインドネシアの年金貯蓄銀行(BTPN)の株価が取得時から大幅に下落したことで、減損損失550億円を計上している。三井住友銀行の株式売買に関わる利益額も前年同期比98%減と大幅に悪化した。貸倒引当金の戻り入れ益の減少に伴う与信関連費用増加の影響も出ている。

■世界経済の不透明感で通期見通しは据え置き


 2016年3月期の通期業績見通しは、三菱UFJは当期純利益の目標は8.0%減の9500億円で修正なし。予想期末配当は9円、予想年間配当は18円で、ともに前期と同じで修正はなかった。通期見通しに対する4~9月期の中間期純利益の進捗率は63.0%だった。

 みずほの通期業績見通しは当期純利益が2.9%増の6300億円で修正なし。予想期末配当は前期比0.25円減の3.75円、予想年間配当は前期と同じ7.5円でこれも修正はなかった。通期見通しに対する4~9月期の中間期純利益の進捗率は60.9%だった。

 三井住友FGの通期業績見通しは経常利益を200億円減らし6.1%減を7.7%減の1兆2200億円に下方修正。当期純利益0.8%増の7600億円に修正はなかった。予想期末配当は前期比5円減の75円、予想年間配当は前期比10円増の150円で修正はなかった。通期見通しに対する4~9月期の中間期純利益の進捗率は51.7%だった。

 メガバンクの通期見通しは三菱UFJは最終減益、みずほ、三井住友は最終増益で、三井住友が経常利益を下方修正した以外は当初見通しを据え置いている。しかし中国経済の減速、資源価格の下落は出口が見えず世界経済の不透明感がぬぐえないので、下半期の業績の行方は予断を許さない。

 なお、3大メガバンクは4~9月期決算の発表に合わせて、減損損失の計上や自己資本比率の低下などで業績や財務状況に悪影響が及ぶリスクを減らすために、持ち合い株(政策投資株式)のような長期保有株を削減する目標を決めている。

 三菱UFJは5年以内に保有株の約3割の約8000億円分を売却し、中核的自己資本に対する割合を19%から10%に下げる。みずほは保有株の約4割の約7800億円分を削減必要額とし、そのうち5500億円分を2018年度末までに売却する方針。5500億円分のうち4~5割分は2016年度末までの売却を目指す。三井住友FGは5年以内に保有株の約3割の約5000億円分を売却し、狭義の中核的自己資本に対する割合を28%から14%に下げる。

 長期保有株の削減は自己資本比率を安定させることで、「バーゼル3」以後の金融機関の自己資本規制への対策にもなる。(編集担当:寺尾淳)

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