過量服薬による入院患者への精神科介入が再入院の減少に繋がる―東大・金原明子氏ら

2015年11月14日 21:46

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 東京大学の金原明子特任助教らの研究グループは、救命救急センターに入院した過量服薬の患者への精神科医の診察が、再入院率の低さと関連していることを明らかにした。

 自殺未遂の経験者が自殺を完遂する可能性は、自殺未遂者以外の者と比較して著しく高いと言われている。日本では、自殺対策基本法に基づき、2008年度に「救命救急入院料 精神疾患診断治療初回加算」が新設されたが、その有効性は検証されていなかった。

 今回の研究では、大規模入院患者データベースであるDPCデータベースを用いて、過量服薬で救命救急センターに入院した患者(2010年7月~2013年3月退院)のデータを分析した。その結果、救命救急センターに入院した過量服薬の患者について、368病院から、2万9,564人が抽出され、そのうち1万3,035人(44%)が介入を受けていること、1,961人(6.6%)が再入院をしていることがわかった。

 また、介入を受けやすい患者特性は、30代・女性・統合失調症・気分障害・パーソナリティ障害・重度の意識障害・気管挿管(気道確保)を受けた患者・2012年度退院患者であった。さらに、傾向スコアマッチングという統計的手法により7,938ペアが抽出され、そのうち1,304人(8.2%)が再入院していること、再入院率は介入群7.3%、対照群9.1%で、介入群の方が、対照群より再入院率が有意に低いという結果になった。

 これらの結果から、精神科医診察が再入院率の低さと関連しており、自殺予防対策の一環として目標とされた「救急医療における精神科医療の充実」が、再入院予防のために重要であることが示された。

 なお、この内容は「British Journal of Psychiatry Open」に掲載された。論文タイトルは、「Psychiatric Intervention and Repeated Admission to Emergency Centres Due to Drug Overdose」。

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