新生児に個性的な名前をつける傾向が増加―京大・荻原祐二氏ら

2015年10月27日 16:53

印刷

人気のある名前の読みトップ10を与えられた新生児の割合の経時変化を示す図(京都大学の発表資料より)

人気のある名前の読みトップ10を与えられた新生児の割合の経時変化を示す図(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学の荻原祐二研究員・内田由紀子特定准教授らの研究グループは、新生児の名前の経時的な変化を分析することによって、日本文化は個性をより重視する個人主義文化に徐々に変容しつつあることを示した。

 近年の日本では、個人としての独立や自立、他者と違って個性的であることなどが重視され、個人主義化が進んでいるとされている。実際、家族サイズの減少や離婚率の増加などから、日本文化の個人主義化が指摘されている。

 今回の研究では、ベネッセコーポレーションが毎年公開している新生児の名前ランキング(平均約40,000件の名前を毎年収集)を用いて、人気のある名前が与えられた新生児の割合を分析した。

 その結果、人気のある読みトップ10を与えられた新生児の割合は、経時的に減少していること、一方で、人気のある漢字トップ10を与えられた新生児の割合は、経時的に増加していることがわかった。

 さらに、明治安田生命が公開している新生児の名前ランキング(平均約8,000件の名前を毎年収集)を分析したところ、人気のある漢字の組み合わせトップ10のうち、読みが複数あるもの(例えば、「大翔」には「ひろと」「はると」「つばさ」などの読みがある一方、「蓮」は 「れん」とのみ読まれていた)の割合は、経時的に増加していることが明らかになった。

 これらの結果から、人気のある漢字に対して一般的でない読みを与えることによって個性的な名前を与える傾向が増加していることが明らかとなった。例えば、「海」を「かい」や「うみ」ではなく「まりん」と読むような英語読みや、「心」を「こころ」ではなく、「ここ」や「こ」と読むような短縮読みなどの方法がみられる。こうした傾向は、日本文化が個性をより重視する個人主義文化に徐々に変容していることを示唆している。

 研究メンバーは「今後は、なぜ個性的な名前を与えようとする傾向が増加しているのか、そして個性的な名前を与えられることが変容する社会の中でどのような帰結を生み出しているのかなどを検討したいと考えています」とコメントしている。

 なお、この内容は「Frontiers in Psychology」に掲載された。論文タイトルは、「Are common names becoming less common? The rise in uniqueness and individualism in Japan」。

関連記事