電気エネルギーで生きる微生物を初めて特定―理研・中村龍平氏ら

2015年10月1日 19:27

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電気エネルギーを直接利用して生きる微生物として特定された「A.ferrooxidans」の顕微鏡像。電気エネルギーを使って、二酸化炭素を有機物に作り変える。(理化学研究所の発表資料より)

電気エネルギーを直接利用して生きる微生物として特定された「A.ferrooxidans」の顕微鏡像。電気エネルギーを使って、二酸化炭素を有機物に作り変える。(理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]

  • 電気化学反応容器へのA.ferrooxidansの細胞添加による電流生成の確認。赤線は細胞あり、青線は細胞無しの結果を示す。細胞添加直後からマイナスの電流が上昇し、紫外線照射(黒線)後徐々に電流が減少したことが分かる。(理化学研究所の発表資料より)
  • 微小の電力を使って生きる生物の代謝経路を示す図。細胞内に存在する分岐型電子伝達系を昇圧回路として利用し、それによってわずか0.3Vの電位差を1.14 Vまで高め、二酸化炭素から有機物を作り出す。(理化学研究所の発表資料より)

 理化学研究所の中村龍平チームリーダー・石居拓己研修生らの共同研究チームは、電気エネルギーを直接利用して生きる微生物を初めて特定した。

 地球上の生物は、光合成生物と化学合成生物によって作り出される有機物によって支えられている。一方、ごく最近になり、光合成と化学合成に代わる第3の有機物を合成する生物として、電気で生きる微生物(電気合成微生物)の存在が注目を集め始めている。

 特に、深海底や地中などの生物が利用できるエネルギーが極端に少ない環境では、海底を流れる電流を利用する電気合成微生物が深海生命圏の一次生産者となる可能性があると議論されている。

 今回の研究では、鉄イオンをエネルギー源として利用する化学合成細菌の一種である「A.ferrooxidans」に着目し、固体の電極を電子源として用いた電気化学反応容器の中で細胞の培養を行った。

 その結果、細胞を電気化学反応容器に添加した直後に微弱な電流の生成が観測され、時間の経過と共にマイナスの電流が増大すること、紫外光を細胞に照射すると電流は大幅に減少することが分かった。

 次に、二酸化炭素から有機物を合成するために必要なaa3複合タンパク質とbc1複合タンパク質のそれぞれに対して特異的な阻害効果を持つ化合物を加え、電流生成の変化を追跡したところ、aa3複合タンパク質の阻害剤としては一酸化炭素を用い、bc1複合タンパク質の阻害剤としてはアンチマイシンAを用いたところ、電流生成が抑制されることが明らかになった。

 さらに、電流が流れる条件においてのみ、電極上に付着した細胞が増殖したことから、細胞の内部に輸送された電子が二酸化炭素の固定に利用されていることが分かった。

 これらの結果から、A.ferrooxidansが微弱な電位差を利用しながら生きる電気合成生物であることが明らかになった。

 今後は、本研究成果が、深海底に広がる電気に依存した生命圏である電気生態系を今後調査する上で、重要な知見になると考えられる。また、研究チームは、極めて微小な電力で生きる電気合成微生物の存在が、微小電力の利用という観点からも新たな知見を提供するとしている。

 なお、この内容は「Frontiers in Microbiology」に掲載された。論文タイトルは、「From Chemolithoautotrophs to Electrolithoautotrophs: CO2 Fixation by Fe(II)-Oxidizing Bacteria Coupled with Direct Uptake of Electrons from Solid Electron Sources」。

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