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トイレは日本のおもてなし。第一回「トイレ大賞」発表
女性活躍担当大臣・男女共同参画担当大臣賞(空間部門)を受賞した仙台市と積水ハウス、TOTOが共同で開発した「おりひめトイレ」[写真拡大]
昨今、中国人観光客の爆買いが話題になっているが、その人気商品の一つに「温水洗浄便座」がある。また、中国のみならず、日本製の高性能トイレはアジア各国、欧米でも絶賛されている。これを受けて、政府も日本の快適トイレを成長戦略の柱に掲げ、温水便座などの輸出増を目指し、日本製トイレの世界進出を強力に後押ししはじめた。
また国内的にも、日本の快適なトイレの活用は女性が暮らしやすい空間づくりの象徴であるとして、政府は内閣官房の有識者会議「『暮らしの質』向上検討会」を開催し、5月25日には、公共施設における高機能トイレの整備促進を求める提言をまとめている。
政府はこのプロジェクトを「ジャパン・トイレ・チャレンジ」と名付け、快適で清潔、安全なトイレを増やすための様々な取り組みを実施しているが、その一環として今年創設された「日本トイレ大賞」の初めての表彰式が9月4日に執り行われた。利用者に配慮したトイレなどを開発した、企業や団体など378件の応募の中から、清潔さ、安全性、快適さ、新規性と独創性、そして、持続可能性を基準に各部門賞28件が選定された。
「空間部門・公共トイレ」では、東京都環境局が2012年にリニューアル工事を行った大見晴園地トイレが選ばれた。同トイレは、山岳トイレ初となる二階建てにしたことによりブース数の増加を実現し、改修前の行列を解消することに成功。また、ブース内にフィッティングボードやベビーシート、ベビーキープ、男児用便器が設置されるなど、女性や親子連れに利用しやすいトイレであることが高く評価されたようだ。
地方創生担当大臣賞は、大分市中心部のトイレを舞台にしたアートイベント「おおいたトイレンナーレ2015」が受賞。トイレを舞台にしたアート空間で地域活性化を図る独自のユニークな視点が高い評価を受けた。
女性活躍担当大臣・男女共同参画担当大臣賞を受賞したのは、国際協力NGO「公益社団法人 日本国際民間協力会(NICCO)」が、アフリカのマラウイ共和国とケニア共和国で建設と普及活動を行なっているエコロジカル・サニテーション・トイレ(し尿分離型環境衛生式トイレ:以下エコサントイレ)事業だ。エコサントイレは、地域の衛生改善、良い土壌の畑つくり、化学肥料使用の抑制を実現する一石三鳥のトイレとして現地でも歓迎されており、同協会は7年間の活動で1000基を超えるエコサントイレの建設を行っている。
同じく、女性活躍担当大臣・男女共同参画担当大臣賞(空間部門)を受賞した「おりひめトイレ」も大変興味深い。同トイレは、2011年3月に発生した東日本大震災での避難所の仮設トイレは利用しづらいなどの声と教訓を活かし、仙台市と積水ハウス<1928>、TOTO株式会社<5332>が共同で開発した、仮設トイレだ。開発にあたっては、積水ハウスの女性従業員の他、仙台市内の女性デザイナーなどが中心となり、女性や子どもにもやさしい仮設トイレを作り上げた。女性らしい優しい曲面の外観と清潔で美しい内装デザインをはじめ、安全、安心、快適に利用できるよう、照明や防犯ベルを設置、ゆとりがある室内にベビーチェア、荷物置き等を機能的に配置した。また、ドアを開けた際にトイレの中が丸見えにならないような配慮も施し、使い勝手についてはTOTOの施設で空間検証を行っている。災害時の避難所やイベントでの活用、近年、女性の就労も増加している建設現場など、様々な分野で女性が活躍できる環境づくりを目指して、既に行政や企業を中心に採用事例があるという。
東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、今後益々、世界の注目が日本に集まることになるだろう。単なるアイデアトイレのコンテストではなく、世界に誇れるような快適なトイレが集結した第一回のトイレ大賞。ネーミングの響きから開催を疑問視する声もあったようだが、受賞作品の内容を見ると、確かに今の日本、快適な日本、清潔な日本、そして日本の「おもてなし」の精神を海外にアピールするには、日本のトイレ環境は最適なツールであることが分かる。次回のトイレ大賞も楽しみだ。(編集担当:藤原伊織)
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