北大、「慣れた刺激」と「新しい刺激」への反応の違いを明らかに

2015年8月31日 21:11

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A:トレッドミル上を歩くフタホシコオロギ。B:尾葉の拡大写真。片側につき500~750本くらいの機械感触毛が生えている。C:蛍光色素を注入したGI8-1。左手に丸く見えているのが細胞体(核のある部分)、上に伸びているのが神経軸索。(北海道大学の発表資料より)

A:トレッドミル上を歩くフタホシコオロギ。B:尾葉の拡大写真。片側につき500~750本くらいの機械感触毛が生えている。C:蛍光色素を注入したGI8-1。左手に丸く見えているのが細胞体(核のある部分)、上に伸びているのが神経軸索。(北海道大学の発表資料より)[写真拡大]

 北海道大学の小川宏人准教授らによる研究グループは、コオロギに同じ方向から繰り返し気流を与えて刺激した後に別の方向から気流で刺激すると、反復刺激の気流よりも反応が大きくなることを発見した。

 動物にとって、慣れ親しんだ刺激と新しい刺激を区別し、新しい刺激だけに注目することは、生存に関わる重要な課題である。繰り返される刺激に対しては、神経応答が弱くなることが分かっているが、その神経細胞のメカニズムについては明らかになっていなかった。

 今回の研究では、ボール状のトレッドミル上のコオロギに気流刺激を同じ方向から数秒間隔で繰り返し与えた後、さらに同じ間隔で別の方向から刺激した。その結果、コオロギは短い気流刺激に対して刺激方向と逆向きに歩行する運動を示すが、反復刺激中はその歩行の速さが徐々に遅くなっていくこと、そして別の方向からの刺激に対しては、歩行速度が回復し、素早い逃避行動を示すことを明らかにした。

 また、気流応答性巨大介在ニューロン(GI)は、反復刺激に対する スパイク発火が徐々に減少していく「順応」を示したが、カルシウムキレート剤を注入すると反復刺激への順応が弱くなること、8種類あるGIのうち、GI8-1と呼ばれるニューロンは行動変化にみられたような刺激方向依存的な順応を示したが、GI10-2は刺激方向によらず全ての方向からの刺激に対して同じように順応することも分かった。

 GI8-1では、刺激によるカルシウム上昇が活性化した入力個所に限定して起こるため、反復刺激の情報だけが伝わりにくくなるのに対して、GI10-2では細胞全体でカルシウム上昇が生じるため、全ての方向からの刺激に対して反応性が弱くなるのではないかと考えられるという。

 研究グループは今後、GI8-1やGI10-2などの細胞の個性が、どのように形成されていくのかを明らかにしていきたいとしている。

 なお、この内容は「The Journal of Neuroscience」に掲載された。論文タイトルは、「Direction-specific adaptation in neuronal and behavioral responses of an insect mechanosensory system」(昆虫の機械感覚システムにおける神経及び行動応答の刺激方向依存的順応)。

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