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社会貢献と事業戦略に二分化しはじめた、日本企業のCSR活動
日本企業のグローバル化が進む中、日本企業のCSR活動も、純粋な社会貢献と考える企業と、事業戦略と考える企業の二分化が進んでいる。[写真拡大]
日本企業のグローバル化が進む中、CSR活動に対する考え方や姿勢も、少しずつ変化しはじめているようだ。CSRといえば、日本では本業とは異なる、ボランティア活動や企業の社会貢献活動というイメージが根強いが、CSR先進国のEU諸国では考え方が少し違っている。
2011年10月に発行された「CSRに関する欧州連合新戦略」の中で、欧州委員会はCSRについて「企業の社会への影響に対する責任」と定義した上で、「株主や顧客、従業員などのステークホルダーと社会の間での共通価値の創造の最大化」と「企業が及ぼす潜在的悪影響の特定、防止、軽減」の2点を具体的な活動要旨に挙げている。一見すると、日本のCSRの考え方と大差がないようにも思えるかもしれないが、重要なのは2つ目に挙げた「企業が及ぼす潜在的悪影響」の改善という点。つまり、欧州企業のCSRは決して純粋な「慈善事業」や「寄付活動」ではなく、企業そのものの事業活動に密接に関わる重要な戦略なのだ。
また、一口にCSRといってもその内容は様々だ。株式会社NTTデータスミスが世界32カ国を対象に行ったCSR消費者意識調査によると、世界的には「教育」や「人材育成」関連、また「貧困対策」、「健康問題」改善などを目的としたCSRがメジャーだが、日本で最もメジャーである「環境問題」に対するCSRはマイナーである国が多いという。しかし、これが必ずしも悪いわけではない。環境問題は世界共通の関心事であり、とくに途上国の環境改善は緊急課題だ。そして何よりも、欧州が行っていないのなら逆に、インパクトも大きいだろう。
環境問題に対して日本企業が行っているCSR活動の代表格は植樹活動だ。これについては、日本をはじめ、中国やアセアン諸国など合計13カ国で小売事業や金融事業、サービス事業などを展開するイオン<8267>も力を入れている。同社では、1991年より新しい店舗がオープンする際には、顧客参加のものと、店舗の敷地内に植樹を行う「イオン ふるさとの森づくり」を実施しており、2015年2月28日現在で1億867万7710本もの植樹を行っている。海外でも、カンボジアのプノンペンやミャンマーのヤンゴンなどで植樹活動を行っている。これなどはまさに、出店地域におけるステークホルダーの信頼を得るための戦略的な意味合いが大きいと思われる。
一方、同じ植樹活動でも、株式会社山田養蜂場の植樹活動はイオンのそれとは大きく異なる。同社のCSRは事業目的ではなく、純粋に子供たちや社会、自然環境の改善や保護を目的とした社会貢献活動だ。同社は、はちみつやローヤルゼリーなどのミツバチ産品をはじめとする健康食品や美容用品の製造販売で知られるが、同社の原点はあくまで養蜂業。「豊かな自然環境がなければ成り立たない」という養蜂業者の観点から、1999年以降毎年、国内外で植樹活動を行っている。これまでに植樹した本数は、日本国内で12万5000本以上、海外ではネパールで45万本以上、中国では148万本以上にのぼる。今年の8月にも6日間のネパール植樹ツアーを開催し、世界遺産のチャングナラヤン寺院にて約2000本の植樹を行ったばかりだ。また、その際には植樹の他にも4月に発生した大地震で大きな被害を受けたナガルコットにある小学校にボランティア訪問し、片付けの手伝いや現地の子供たちとの交流を実施している。
グローバル企業が推し進める欧州タイプのCSR活動と、日本企業の純粋な思いに支えられた社会貢献としてのCSR活動。どちらにしても、企業にとって大切な活動であることに違いはない。CSRへの取り組みやスタンスを見ると、その企業の体質や姿勢も垣間見えてくるから面白い。(編集担当:藤原伊織)
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※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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