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京大、ヒトiPS細胞から始原生殖細胞を誘導する方法を開発
ヒトiPS細胞とそれから誘導したヒト初期中胚葉様細胞の位相差顕微鏡写真(スケールバー 200μm、京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学の斎藤通紀教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞からヒト始原生殖細胞様細胞を効率よく誘導する方法論の開発に成功した。
これまで、マウスES細胞やマウスiPS細胞などの多能性幹細胞から、サイトカインを用いて、エピブラスト様細胞や始原生殖細胞様細胞を誘導することに成功しているが、ヒトES細胞やiPS細胞から生殖細胞への人為的な誘導は難しいと考えられていた。
今回の研究では、ゲノム編集技術を用いて、遺伝子BLIMP1とTFAP2Cが発現すると、それぞれ赤色と緑色の蛍光を発するヒトiPS細胞を作製した。そして、このiPS細胞をサイトカイン等で処理することにより、まず、初期中胚葉様細胞に誘導し、さらにマウス始原生殖細胞の場合と同様の方法で処理することで、BLIMP1やTFAP2Cを高く発現するヒト始原生殖細胞様細胞が効率よく誘導されることが分かった。
この方法で得られたヒト始原生殖細胞様細胞は、ヒトやカニクイザルの始原生殖細胞とよく似た遺伝子発現パターンを示し、初期のヒト始原生殖細胞に似た状態であることが示唆された。また、ヒト始原生殖細胞様細胞は、マウスと同様、生殖細胞の発生過程で特徴的に見られるエピゲノムリプログラミングを起こすが、マウスの始原生殖細胞とは遺伝子発現パターンが大きく異なることも分かった。
研究メンバーは、「この研究により、ヒト生殖細胞発生メカニズム解明の基盤が形成され、これまで非常に困難であったヒト生殖細胞の発生機構の解明が大きく前進すると期待されます。ヒト始原生殖細胞からヒト精子やヒト卵子の誘導が可能となれば、ヒトの遺伝情報継承機構の解明が進むのみならず、不妊症や遺伝病の発症機序解明に役立つと期待されます。」とコメントしている。
なお、この内容は「Cell Stem Cell」に掲載された。論文タイトルは、「Robust In Vitro Induction of Human Germ Cell Fate from Pluripotent Stem Cells」。
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