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ヒト細胞が放射線による損傷を感知して修復する仕組みが明らかに―東北大
東北大学の宇井彩子博士・安井明教授らのグループは、ヒト細胞で、放射線の最も深刻な影響であるDNAの二本鎖切断が生じた近傍の転写(DNAの情報をRNAに読み取る過程)が止まる仕組みを解明した。
放射線が人間に与える影響として、DNAの二重鎖切断が最も深刻で、細胞死や発癌の原因になると考えられている。ほとんどの場合、DNA上の傷はそれを修復する蛋白質の働きによって細胞死や癌化から守られているが、その詳しい機構の多くは分っていない。
今回の研究では、RNAポリメラーゼに結合して転写を活性化するENL蛋白質に、細胞内で転写を抑えるポリコームと呼ばれる蛋白質が結合していることを発見した。そして、二重鎖切断が出来るとATMと呼ばれる蛋白質がまず現場にやって来て活性化され、ENLにリン酸化という修飾を施すこと、そしてENLにポリコームがくっつき、そのポリコームが近傍のDNAに結合するヒストンにユビキチン化という修飾を施すことにより、その場の転写を止めてしまうことが分かった。
この機構は、線路上の障害の存在を電車に知らせて運行を止め、修理屋を呼んで修理させ、又運行を開始する電車の運行システムに似ている。共通点は、障害の現場で電車を止めるのではなく、それぞれの進行中の電車に障害の存在が伝えられ、その場所で停止するということであり、このシステムによって、高速道路の様な車同士の追突事故は生じず、修理が効率的に進められ、修理の終わった後での再開がスムーズになる。
研究チームは今回発見したDNA修復の仕組みが、ヒト細胞が持つ細胞死を免れる高度な機構であり、細胞分化や細胞老化一般に重要な意義を持っているとしている。
なお、この内容は「Molecular Cell」に掲載された。論文タイトルは、「Transcriptional elongation factor ENL phosphorylated by ATM recruits Polycomb and switches off transcription for DSB repair」。
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