好況に沸く製造業界。景気に左右されない日本企業の戦略

2015年4月19日 13:35

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記事提供元:エコノミックニュース

好況に沸く製造業界では今、海外展開の拠点として、また生産拠点を集約して強靭な生産体制を構築し、増加する国内需要にも柔軟に対応するため、マザー工場への関心が高まっている。

好況に沸く製造業界では今、海外展開の拠点として、また生産拠点を集約して強靭な生産体制を構築し、増加する国内需要にも柔軟に対応するため、マザー工場への関心が高まっている。[写真拡大]

 製造業界が今、好況に沸いている。日本工作機械工業会が昨年10月に発表した工作機械受注額によると、2014年9月の受注額が、08年に発生したリーマンショック以降の最高値(単月)となる1355億4800万円を記録した。製造業全体でみても、北米市場の需要拡大や、中国の代替市場として成長著しい東南アジア市場のなど海外市場の伸長に加え、国内市場でも、東日本大震災の復興や2020年に開催を控える東京オリンピック関連事業によって建設業を中心に内需が急増しており、建設機械用途の製品がとくに業績を伸ばしている。

 しかし、業界関係者はこの好況を決して楽観視しているわけではない。製造業は景気動向に左右されやすい業界だ。実際、07年頃までは自動車業界を中心に世界規模で外需が拡大し、その波に乗って順調に業績を伸ばしてきたが、リーマンショックの影響で大幅に減少、さらには欧州の債務危機や中国やロシア経済の減速などの影響もそれに拍車をかけた。

 そんな中、製造業界ではマザー工場に位置付けた国内工場を再強化する動きが相次いでいる。マザー工場とは、とくに海外市場に向けてグローバルに展開しようとするメーカーが国外に設置する工場を支援するため、またマーケティングを含めた製品開発や最先端の生産技術の伝承、さらには企業体質そのものまでを世界の工場にコピーする母胎の役割を担っている工場だ。しかし、近年は海外だけでなく、国内需要に向けた工場の機能集約と生産体制の強化、さらにはコストダウンに繋げる役割も大きくなっている。

 例えば、産業機械メーカーのクボタ<6326>は50億円規模の投資を行い、兵庫県尼崎市の阪神工場に国内向け生産を集約、水道などで使うダクタイル鋳鉄管の生産体制を強化した。これに伴い、千葉県船橋市にある京葉工場は、中東など海外市場向けの生産に特化するという。また、建設機械メーカーのコマツ<6301>も2020年度までに計400億円を投入して国内主力工場の刷新を発表しており、すでに石川県小松市の粟津工場に新建屋を建設して、中・小型建機の生産体制を集約している。

 また、工作機器や建設機械の油圧ホースなどの部品も製造している自動車用防振ゴム世界シェアトップの住友理工<5191>も、京都府綾部市に産業用ホースの製造子会社「株式会社TRI京都」を設立し、2014年10月に操業を開始している。同工場は建設・土木機械の需要増に対応するため、国内生産拠点を集約し、生産能力の拡大を図ることを目的に設立されたものだ。ホースの生産単長を従来の3倍にする新製法を導入したほか、工程の大幅短縮を実現し、低コストで高品質な製品の供給体制を整えて、市場シェアの拡大と事業展開の多角化を目指している。

 去る4月16日には、住友理工の西村義明社長をはじめ、京都府から山下晃正副知事、山崎善也綾部市長らを来賓に招いて開所式が行われたその席上で、西村社長はグローバルな世界展開を強調。同社では、すでに展開している中国やインド、ロシアなどの工場と連携して、各国市場のシェア拡大を狙うとともに、新規市場の開拓、また産業用ホース事業部門の海外への技術供与や人材育成の拠点としていく構えだ。

 リーマンショックによる景気の落ち込みからも回復基調にある今、マザー工場を強化することは、盤石な海外展開を行う上で欠かせない戦略となるだろう。また、生産拠点を集約することは、コストを削減することで景気に左右されない強固な生産体制を築くことにもつながる。製造業界のみならず、これからの日本経済全体にとって、大きなモデルケースになるのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)

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