東大、光で居場所が分かるインフルエンザウイルスを開発

2015年3月31日 14:49

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今回の研究では、マウスにそれぞれ異なるColor-fluを感染させて、肺を摘出し、試薬で肺を透明にした。蛍光実体顕微鏡を用いて蛍光たんぱく質を発現するウイルス感染細胞の分布を観察したところ、それぞれの蛍光たんぱく質を発現する感染細胞が気管支に沿って広がっていることが確認できた(東京大学の発表資料より)

今回の研究では、マウスにそれぞれ異なるColor-fluを感染させて、肺を摘出し、試薬で肺を透明にした。蛍光実体顕微鏡を用いて蛍光たんぱく質を発現するウイルス感染細胞の分布を観察したところ、それぞれの蛍光たんぱく質を発現する感染細胞が気管支に沿って広がっていることが確認できた(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の河岡義裕教授・福山聡特任准教授らによる研究グループは、4種類の蛍光たんぱく質を発現するインフルエンザウイルス「Color-flu(カラフル)」の作製に成功した。

 インフルエンザウイルスの研究において、生体内でウイルスがどの細胞に感染しているか、感染細胞を判別することは、最も重要で基本となる情報の一つであり、これまでは免疫組織化学的な手法が一般的で、感染動物から摘出した臓器をホルマリンなどで固定し、感染細胞を同定していた。しかし、この方法では細胞を固定してしまうので、感染細胞を生きたまま解析することができないという課題があった。

 今回の研究では、インフルエンザウイルスのゲノム分節であるNSセグメントに、蛍光たんぱく質のレポーターとしてVenus(黄)、eCFP(青緑)、eGFP(緑)、mCherry(深赤)の遺伝子を挿入したウイルス株「Color-flu(カラフル)」を作製した。そして、2光子レーザー顕微鏡を用いてColor-flu感染マウスの肺を観察したところ、アポトーシス様の形態を示すウイルス感染細胞が高い頻度で認められ、ウイルス感染細胞に接着している多くのマクロファージが、ほとんど動かないことなどが明らかになった。

 今後は、本研究成果が、インフルエンザウイルスの病原性発現メカニズムや新型ウイルス出現メカニズムの解明、そしてワクチンや薬剤開発に役立つと期待されている。

 なお、この内容は3月25日に「Nature Communications」に掲載された。

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