大阪市大、酵母の新しい生殖群を作り出すことに成功

2015年3月26日 15:10

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異なる性の細胞AとBが分泌した性フェロモンに反応して、それぞれ相手を求めて伸びて行き、*のところで接触し、やがて融合する(大阪市立大学の発表資料より)

異なる性の細胞AとBが分泌した性フェロモンに反応して、それぞれ相手を求めて伸びて行き、*のところで接触し、やがて融合する(大阪市立大学の発表資料より)[写真拡大]

  • 性行動中の分裂酵母たち:オスとメスの細胞は異性を見つけて融合し(右下)、4つの子孫細胞を作る。この性行動にはフェロモンによる刺激が必要(大阪市立大学の発表資料より)

 大阪市立大学の下田親特任教授らによるグループは、最先端のモデル生物である分裂酵母を用いて、酵母における生殖行動を制御する性フェロモンとその受容体を遺伝子操作により協調的に改変し、酵母の新しい生殖群を作り出すことに成功した。

 現在、地球上にはおよそ数千万の種が生息していると推定されており、進化の過程で一つの種から異なる種が分岐して新しい種になる。多くの動物では、体外に性フェロモンを分泌して異性に存在を知らせるが、このフェロモンと受容体との分子適合性は厳格で、ある種のフェロモンは異なる種の異性には働かない。そして、フェロモンの構造が偶然に変化することが生殖隔離の原因となり、種が分かれる原動力の一つであると推定されている。

 今回の研究では、分裂酵母の性フェロモンの構造を1アミノ酸単位で網羅的に改変し、正常な異性には感受されない35種の不活性型のフェロモンを作り出した。そして、受容体の遺伝子にランダムに変異を導入し、偶然、不活性型フェロモンを受容できるようになった受容体を合計60万個の変異個体から探し出した。

 そして、変異型のオスとメス、正常なオスとメスの4つの個体に、それぞれ異なる目印になる遺伝子をつけて混合して生殖を行わせた結果、正常型と変異型の異性間では高頻度で目印の遺伝子のかき混ぜが起こったのに、両生殖グループの間では遺伝子の交換はまったく起こらないことが分かった。

 研究グループは、今回の結果が今後の種分化機構の研究に大きなインパクトを与え、遺伝子操作が可能な昆虫を用いた同様の研究に火をつける効果が予想されるとしている。

 なお、この内容は3月24日に「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America」に掲載された。

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