化石の殻を分析することで、5000年前の日射量を明らかに

2015年3月5日 21:07

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(a)オオジャコの殻の断面と殻から得られた年代値、(b)試料に供した切片(分析箇所を実践と点線で示した)、(c)ストロンチウムの濃度分布から得られた、日輪の様子。明るい緑色の細いバンドが濃度の高い層(夜間に成長した分)で、暗い青色の太いバンドが濃度の低い層(昼間に成長した分)を示す(東京大学と北海道大学の発表資料より)

(a)オオジャコの殻の断面と殻から得られた年代値、(b)試料に供した切片(分析箇所を実践と点線で示した)、(c)ストロンチウムの濃度分布から得られた、日輪の様子。明るい緑色の細いバンドが濃度の高い層(夜間に成長した分)で、暗い青色の太いバンドが濃度の低い層(昼間に成長した分)を示す(東京大学と北海道大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京大学の佐野有司教授・堀真子特任研究員らによる研究グループは、化石シャコガイの殻に含まれるストロンチウムとカルシウムの比を解析することで、5000年前の日射量を抽出することに成功した。

 過去の日射量を調べることは、気候変動や生態系を知るために非常に重要である。しかし、日射量と気候は連動しているため、これら2つを分離して抽出するのは困難であった。

 今回の研究では、沖縄県石垣島でオオジャコの化石を採集し、二次元高分解能二次イオン質量分析計を用いて化石シャコガイの殻に含まれるストロンチウムとカルシウムの比を分析した。オオジャコの成長速度は年間数ミリメートルに及ぶので、2マイクロメートルの空間解像度で殻に含まれる微量な元素を分析すれば、2~3時間という間隔で推定することができる。

 分析の結果、殻に含まれるストロンチウム/カルシウム比は、成長速度が遅くなる夜間に上昇し、成長速度が早い日中に低下することが分かった。特に明瞭な周期パターンが得られた2年分の冬のデータを解析したところ、最初の冬の平均単位時間当たり日射量は、2.60±0.17メガジュール毎平方メートルとなり、現在の晴天時の平均日射量に相当することが判明した。

 今後は、寒冷期に生息していた個体の化石にも研究を展開することで、将来的に気候変動のメカニズムを明らかにする手がかりとなると期待されている。

 なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。

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