東北大、カーボンナノチューブ分子ベアリングは2種類の回転を持つことを明らかに

2015年3月5日 15:31

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カーボンナノチューブ分子ベアリングを示す図。ベアリング(赤)内部で回転子(灰)が軸(青)を中心に、あたかもコマのように軸回転している。上図が分光分析でわかっていた大まかな回転運動。下図が今回の理論研究から解明された回転運動の詳細。「歳差運動(左)」と「自転運動(右)」の二種が存在していることが明らかとなった(東北大学とJSTの発表資料より)

カーボンナノチューブ分子ベアリングを示す図。ベアリング(赤)内部で回転子(灰)が軸(青)を中心に、あたかもコマのように軸回転している。上図が分光分析でわかっていた大まかな回転運動。下図が今回の理論研究から解明された回転運動の詳細。「歳差運動(左)」と「自転運動(右)」の二種が存在していることが明らかとなった(東北大学とJSTの発表資料より)[写真拡大]

  • カーボンナノチューブ分子ベアリングの回転運動の詳細を示す図。外側のベアリング(赤)の中で、回転子が回転する。低温(低エネルギー状態)では、歳差運動のみだが、高温(高エネルギー状態)では、歳差運動に自転運動が加わる(東北大学とJSTの発表資料より)
  • カーボンナノチューブ分子ベアリングの歳差運動(東北大学とJSTの発表資料より)
  • カーボンナノチューブ分子ベアリングの自転運動(東北大学とJSTの発表資料より)

 東北大学の磯部寛之教授・河野裕彦教授らによる共同研究グループは、世界最小のカーボンナノチューブ分子ベアリングには、「歳差運動」と「自転運動」の異なる回転様式が存在することを明らかにした。

 カーボンナノチューブ分子ベアリングは、有限長カーボンナノチューブ分子を外枠、フラーレンを回転子としたナノサイズのベアリングで、これまでの分光分析から回転子が軸回転していることが明らかになっていた。

 今回の研究では、密度汎関数法の中から、カーボンナノチューブ分子ベアリングの理論分析の手法として密度汎関数LC-BLYP法が最適であり、実験的な熱力学エネルギーを非常に精度良く再現することをつきとめた。そして、この手法を活用してカーボンナノチューブ分子ベアリングの動きを再現したところ、回転には「歳差運動」と「自転運動」という2種類の異なる動きがあることが分かった。

 さらに、研究グループは、温度が低いときには「歳差運動」が主に起こっており、温度を高くするにつれて、そこに「自転運動」が加わっていくことを明らかにした。

 今後は、この新知見を分子設計に発展・活用することで、ナノサイズの分子運動が自在制御できるようになると期待されている。

 なお、この内容は「Chemical Science」に掲載された。

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