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千葉大、喘息などのアレルギー性気道炎症が慢性化メカニズムを解明 新薬開発に期待
アレルギー炎症の発症メカニズムの概要を示す図(千葉大学などの発表資料より)[写真拡大]
千葉大学の遠藤裕介特任講師・中山俊憲教授らによる研究グループは、アレルギー性炎症を慢性化させる免疫系のメカニズムを明らかにした。
喘息は代表的なアレルギー疾患であり、世界ではおよそ300万人が罹患していると報告されている。しかし、その治療は対症療法がほとんどで、根本的な治療方法は開発されていない。
今回の研究では、炎症性サイトカインIL-33を欠損させたマウスを用いて実験を行ったところ、IL-33はアレルギー疾患の病原性の指標であるIL-5の産生を記憶Th2細胞特異的に誘導することが分かった。また、IL-33の受容体を欠損させたマウスにアレルギー性気道炎症を起こさせ、ぜんそくの重症度について調べたところ、気道肺胞洗浄液中への好酸球の浸潤や気道過敏性の反応といったアレルギー性炎症反応が有意に抑制されることが明らかになった。
これらの結果より、IL-33により記憶Th2細胞の病原性が誘導されることがマウスの病態モデルで確認された。このIL-33から記憶Th2細胞に至るサイクルで病態が増悪化し、ぜんそくや副鼻腔炎といったアレルギー疾患の慢性化が誘導されると考えられることから、IL-33やIL-33受容体を発現している病原性記憶Th2細胞、IL-33の下流で働き病原性を誘導する分子であるp38を創薬ターゲットとすることで、慢性アレルギー疾患治療薬を新たに開発できる可能性がある。
また、多くのアレルギー疾患の治療薬として使われている抗炎症薬は種々の炎症性サイトカインなどのタンパク質の産生を抑制するが、創薬ターゲットが広がったことで従来では対処が困難であったステロイド抵抗性の難治性慢性アレルギー疾患の治療開発に役立つことが期待されるという。
なお、この内容は「Immunity」オンライン版に掲載された。
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