京大、ヒトT細胞白血病ウイルス1型の感染特異性の解明に成功

2015年2月6日 16:13

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TCF1、LEF1とHTLV-1感染の関連を示す図(京都大学の発表資料より)

TCF1、LEF1とHTLV-1感染の関連を示す図(京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学は5日、松岡雅雄ウイルス研究所教授、安永純一朗同講師らと霊長類研究所の研究グループが、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(humaHTLV-1)が、成熟Tリンパ球を標的とする理由を解明することに成功したと発表した。日本が世界最大の感染国となっている、HTLV-1感染症の病態解明が期待されるという。

 HTLV-1は、成人T細胞白血病(ATL)や難治性進行性神経疾患であるHTLV-1関連脊髄症の原因となるレトロウイルス。日本には現在、約108万人のHTLV-1感染者が存在すると推定されており、日本が世界最大の感染国。全世界では約1000~2000万人の感染者が存在すると考えられている。

 これまで、HTLV-1は主に末梢の成熟したCD4陽性Tリンパ球に感染していることが知られていたが、胸腺などに存在する未成熟なTリンパ球における感染の程度や、ウイルスの指向性を規定するメカニズムは不明だった。

 この研究では、HTLV-1感染細胞株、HTLV-1感染者由来T細胞を用いた解析により、 HTLV-1は未熟Tリンパ球ではなく成熟Tリンパ球を感染の標的としていることが示されたという。

 また、ニホンザルはHTLV-1の近縁ウイルスであるSTLV-1に高頻度で自然感染しており、その感染細胞はHTLV-1とよく似た動態を示すことが知られている。研究ではSTLV-1感染ニホンザルの胸腺、末梢血中における感染細胞の割合を解析し、胸腺中の特に未熟なTリンパ球には感染細胞が少ないことを見出した。

 この研究によりHTLV-1が成熟Tリンパ球を標的とし感染の拡大に利用する機序の一端が明らかとなった。今後は、ウイルスがいかにして感染細胞を生体内に分布し、またがん化に導いているか、その分子機構を明らかにしていくという。

 研究成果は、米国科学アカデミー紀要「PNAS」に2月2日付け(米国時間)で掲載された。(記事:町田光・記事一覧を見る

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