ヤマト運輸、クロネコメール便を3月で廃止へ 利用者の「信書」違反防止で

2015年1月23日 15:56

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ヤマト運輸は、3月31日の受付分を最後に「クロネコメール便」のサービスを廃止することを決定した。写真は同社がWebサイトで公開したお知らせの一部。

ヤマト運輸は、3月31日の受付分を最後に「クロネコメール便」のサービスを廃止することを決定した。写真は同社がWebサイトで公開したお知らせの一部。[写真拡大]

 ヤマト運輸は22日、3月31日の受付分を最後に「クロネコメール便」のサービスを廃止することを決定したと発表した。4月1日より、「小さな荷物」を対象にした新たなサービス「クロネコDM便」を提供する。

 「クロネコメール便」は玄関先での対面による荷物の受け渡しではなく、受領印を必要とせず、郵便受け等に投函される配達サービス。A4サイズの封筒が最低価格82円から送れることで、特に会報誌、パンフレット、カタログ等を定期配送する事業者などが活用してきた。

 廃止の理由について同社は、「郵便法における信書問題」だと説明している。「信書」とは手紙等のことで、信書は郵送は許されているが、メール便での配送は郵便法上許されておらず、これに違反した場合は、配送業者だけでなく、委託者、つまり利用者まで罰せられることになる。

 実際に2009年7月以降、同社のクロネコメール便の利用者が信書にあたる文書を送り、郵便法違反容疑で書類送検、もしくは警察から事情聴取されたケースは計8件にのぼったという。

 郵便法における信書問題は複雑で、例えば履歴書などのケースがある。就活が始まると、学生と企業の間で履歴書のやり取りが頻発する。この場合、学生が企業にメール便で履歴書を送ると信書となり違法行為だ。しかし、企業が不採用等で学生に同じ履歴書を返送する場合は、郵便法上では信書にはならずメール便での郵送が可能になる。

 このように「何が新書にあたるのか」の定義がとてもあいまいで、利用者が自分の行為の違法性を理解しにくいという問題が、今回のメール便廃止の背景にはある。

 一方で同社は、2013年12月に、総務省 情報通信審議会 郵政政策部会において、内容物ではなく、誰もが見た目で判断できる「『外形基準』の導入による信書規制の改革」を提案し、信書を送ってしまっても、送った利用者ではなく受け付けた運送事業者のみが罪に問われる基準にすべきであると訴えてきた。

 しかし現在に至っても、同社の主張は受け入れられず、依然、「利用者のリスクをふせぐことができない状態」となっているため、現在の「クロネコメール便」は3月末をもって廃止することを決定したという。

 同社では、同サービスを利用してカタログ等を送付している事業者などへは、4月1日より開始する新たなサービス「クロネコDM便」への移行を促す予定だ。また、「クロネコDM便」の詳細に関しては3月に発表するという。(記事:町田光・記事一覧を見る

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