東大、鉄系高温超伝導の仕組みをスーパーコンピュータ「京」で解明

2014年12月25日 01:04

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鉄系超伝導体LaFeAsOの理論模型に対する相図(東京大学の発表資料より)

鉄系超伝導体LaFeAsOの理論模型に対する相図(東京大学の発表資料より)[写真拡大]

  • 超伝導と電子密度のゆらぎの相関関係を示す図(東京大学の発表資料より)

 東京大学の三澤貴宏助教・今田正俊教授らによる研究グループは、鉄系高温超伝導が発生する仕組みを、スーパーコンピュータ「京」を使って明らかにした。

 高温超伝導を起こす物質としては、1986年に銅酸化物高温超伝導体、2008年には鉄系高温超伝導体が発見された。現在、銅酸化物高温超伝導と鉄系超伝導の共通点・相違点から高温超伝導が起きる仕組みを明らかにしようとする研究が盛んに行われており、鉄系超伝導体の超伝導には電子の持つ磁気的なゆらぎや軌道のゆらぎが関与していると考えられているが、その詳細は解明されていなかった。

 今回の研究では、まず固体に対する第一原理計算の結果を用いることで、物質中の電子間の相互作用の大きさを評価して、典型的な鉄系超伝導体であるLaFeAsO(La:ランタン、Fe:鉄、As:ヒ素、O:酸素)の理論模型を導出した。さらに、スーパーコンピューター「京」を用いて多変数変分モンテカルロ法を用いた大規模な数値計算を行い、磁気的なゆらぎや軌道のゆらぎとよばれるものと超伝導の出現は対応しないこと、反強磁性と呼ばれる磁性相への一次相転移の近くで電子密度を不均一にしようとするゆらぎが増大し、これと一対一対応して超伝導が引き起こされることを突き止めた。

 今後は、本研究を活かして、より高い転移温度をもつ超伝導体を実現し、冷却コストの少ない超伝導体実現と応用へ向けた研究が活発化すると期待されている。

 なお、この内容は12月22日に「Nature Communications」に掲載された。

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