慶大、一つの遺伝子によりヒト皮膚細胞から人工血管の作製に成功

2014年12月24日 13:17

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ヒト皮膚線維芽細胞から転換させた血管内皮細胞を免疫不全マウスに移植したところ、1.5カ月後に一部の血管は壁細胞で裏打ちされた成熟血管となった(赤:血管内皮細胞、青:壁細胞、慶應義塾大学の発表資料より)

ヒト皮膚線維芽細胞から転換させた血管内皮細胞を免疫不全マウスに移植したところ、1.5カ月後に一部の血管は壁細胞で裏打ちされた成熟血管となった(赤:血管内皮細胞、青:壁細胞、慶應義塾大学の発表資料より)[写真拡大]

 慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室の森田林平専任講師と吉村昭彦教授らは23日、久留米大学医学部心臓・血管内科学の安川秀雄准教授、佐々木健一郎講師との共同研究により、ヒトの皮膚細胞を血管内皮細胞に転換する遺伝子を同定したと発表した。

 今回、研究グループは血管内皮細胞の発生に重要な18種類の候補転写因子をヒト皮膚線維芽細胞に導入し、血管内皮細胞に直接転換させる因子を探索した。その結果、一つの遺伝子ETV2を導入することで、ヒト皮膚線維芽細胞を機能的な血管内皮細胞に転換できることを見出したという。

 これまでにもヒト皮膚線維芽細胞や羊水細胞に複数の転写因子を導入することで血管内皮細胞に転換できることが報告されてきたが、この方法は、たった一つの遺伝子を導入することにより血管内皮細胞を作製できます。よって、高い効率と安全性を保ちながら、血管新生療法への新たな細胞ソースの開発につながることが期待されるとしている。

 また、現在iPS 細胞等を用い、様々な体細胞を分化誘導する研究が盛んであり、既に神経細胞や心筋細胞等の作製に成功している。そして、肝臓や腸管など立体臓器の再生も試みられているが、細胞レベルの再生と異なり、臓器の作成・維持には血管網の付与が必須である。つまり、血管再生は臓器再生の成功を導く重要な条件の一つと考えられており、この研究結果は、臓器再生のためのより安全な血管内皮細胞の開発につながるものと期待されるとしている。

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