関連記事
京大、自閉症児童は表情の読み取りが苦手であることを明らかに
「ウオーリーをさがせ」実験に用いた刺激の例。左では一人だけが怒り顔、右では一人だけが柔和な表情をしている(京都大学の発表資料より)[写真拡大]
京都大学の正高信男教授・磯村朋子博士課程学生らによる研究グループは、定型発達児は怒り顔を非常にすばやく見つけ出せるのに対し、自閉症の児童は怒り顔をすばやく見つけ出すことが困難であることを明らかにした。
自閉症の子どもが他人とコミュニケーションを取るのが困難である理由として、一般的には「他者の心情を理解することができない」といった高次な認識や推論に問題があると考えられてきた。
今回の研究では、これまでの仮説とは反対に、自閉症の子どもは基本的な表情の読み取りが苦手であることが、他人とのスムーズな交渉を阻害しているのではないかと考え、多数の無表情の顔の中にある特別な表情を見つけ出す実験を行った。その結果、定型発達者は怒り顔を見つけ出すスピードが向上するが、自閉症の子どもではそういった傾向が現れないことが分かった。
怒り顔は、向けられた者にとっては、身の安全を脅かす信号であるため、それに対し迅速に対処しようとすることは生物としてきわめて適応的な反応であり、その情報処理はほとんど意識下でなされるものと考えられる。だが、自閉症の子どもでは、そのした表情を意識下でよみとり、状況ごとに対応を変化させる柔軟性が乏しいことが判明した。
研究メンバーは、「今回の研究成果から、自閉症の子どもが経験するコミュニケーションの困難の一因に、本知見が関係している可能性が示唆されます。また、幼少の子どもの障害の診断、あるいは療育の手段として応用が期待されます。今後は、より小さな子どもでの研究と、生理指標を用いた計測を行う予定です」とコメントしている。
なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。
スポンサードリンク