東北大、津波による堆積物を高精度に識別する手法を開発

2014年12月1日 23:42

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(c) Mg, Si, Ca の3 元素を利用した場合の識別面。赤丸は津波堆積物、青点は非津波(海成)堆積物を示す。wt%は元素含有量の単位で酸化物重量パーセントを示す。この場合の識別率は91.2%である。
(d) 全18元素を利用した場合。縦軸は識別面からの距離を示す。識別率は95.6%である。
(e) 最適な11元素の場合(Al, Ca, Ti, Mn, Cr, Sb, Cu, Zn, As, Cd, Pb)。全てのサンプルを分別する識別面が描けている。つまり識別率は100%である。この他にも,99%以上の高い識別率を示す元素の組み合わせが数十種類得られている(東北大学の発表資料より)

(c) Mg, Si, Ca の3 元素を利用した場合の識別面。赤丸は津波堆積物、青点は非津波(海成)堆積物を示す。wt%は元素含有量の単位で酸化物重量パーセントを示す。この場合の識別率は91.2%である。 (d) 全18元素を利用した場合。縦軸は識別面からの距離を示す。識別率は95.6%である。 (e) 最適な11元素の場合(Al, Ca, Ti, Mn, Cr, Sb, Cu, Zn, As, Cd, Pb)。全てのサンプルを分別する識別面が描けている。つまり識別率は100%である。この他にも,99%以上の高い識別率を示す元素の組み合わせが数十種類得られている(東北大学の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学の桑谷立助教らによる研究グループは、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う津波の堆積物を元素含有量データから高精度に識別する手法を開発することに成功した。

 過去の津波到達範囲の推定は、インフラ整備や避難計画策定のために非常に重要なものである。これまでは海成生物の微化石や砂層のなどによって津波堆積物の認定が行われていたが、常に微化石が含まれているとは限らない、砂の堆積位置と津波の浸水位置が必ずしも一致しないなどの課題があった。そのため、近年では元素含有量を調べる判別用が注目されている。

 今回の研究では、2011年の東北大震災直後に採取した堆積物と、東北に広く分布する海成堆積物を、機械学習手法の一つである線形判別分布を使って区別した。その結果、99%以上の確率で識別できる元素の組み合わせを見出すことに成功した。

 今後は、本研究成果による解析手法と他の堆積物判別手法を組み合わせることで、過去の巨大地震津波の到達範囲を正確に推定できると期待されている。

 なお、この内容は「Scientific Reports」に掲載された。

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