「医療・介護・福祉」を中心に拡大するロボット産業 一方で多額の開発費に苦しむ現状も

2014年11月1日 22:04

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記事提供元:エコノミックニュース

 ロボット産業は少子高齢化の中での人手不足やサービス部門の生産性向上とともに、世界市場を切り開く成長産業として期待が集まっている。今年3月、医療・介護向けロボットスーツを開発したCYBERDYNEが東証マザーズに上場した。6月には、ソフトバンクグループが世界初の感情認識パーソナルロボット「Pepper」を発表するなど、サービス分野における次世代ロボットへの関心がここにきて高まっている。これを受け、日本政府は9月11日、「第1回ロボット革命実現会議」を開催した。この会議では研究開発から導入・普及までのアクションプランとして 5カ年計画の策定を予定しており、今後も産官学挙げて様々な分野で次世代ロボット開発の動きが活発化しそうだ。

 株式会社帝国データバンクは、自社データベース・信用調査報告書ファイル「CCR」(160万社収録)および公開情報をもとに、医療・介護、移動支援、災害対応、コミュニケーション等のサービス分野のロボット事業(ロボット開発に必要な要素技術も含む)を主に手がける企業を抽出し、分野別、創業年別、資本金別、年売上高別、社長年齢別、都道府県別に集計・分析した。「ロボットベンチャー企業」に関する調査は今回がはじめてとなるという。

 ロボットベンチャー110社を分野別に見ると、「医療・介護・福祉」が36社(構成比 32.7%)でトップとなった。以下、「ホビー・コミュニケーション」(20 社、構成比 18.2%)、「要素技術」(17社、同15.5%)、「物流・移動支援」(9社、同 8.2%)、「重作業支援」(7社、同6.4%)が続いており、多岐にわたることが分かった。

 創業年別に見ると、直近10年以内(2005 年~2014 年)に創業した企業は 58社(構成比52.7%)と、全体の過半数を占めた。リーマン・ショック後は低調に推移していたが、震災後は災害対応等の分野でロボットの活用が見直されたこともあり、再び増加に転じたものと見られる。このうち、昨年創業したロボットベンチャーは7社(同6.4%)、8月末時点で判明している今年創業も3社(同2.7%)を数えた。

 また、資本金別に見ると、「1000万円未満」が 38 社(構成比34.5%)、「1000 万円以上 5000 万円未満」が 42社(同38.2%)を数えた。一般的に多額の開発資金を要するロボットベンチャーの多くが、過小資本に直面している現状が垣間見える。

 年売上高別に見ると、「1億円未満(未詳含む)」が 67社(構成比60.9%)で最も多く、「1億円以上 5億円未満」(24社、同21.8%)と合わせて、5億円未満が全体の8割超。全体を見ると、創業10年未満の企業が過半を占めるなど、事業が本格的には軌道に乗っていないロボットベンチャーが目立つとした。

 社長の年齢が判明した 82社を見ると、「50歳代」が29社(構成比35.4%)で最も多い。「40歳代」の 24社(同29.3%)と合わせて、全体の6割超を40~50歳代の社長が占めた。また、82社の社長平均年齢は「52.8歳」となっており、全国全業種(58.9歳)と比べて相対的に若い社長が目立っている。

 都道府県別に見ると、「東京都」が 41社(構成37.3%)でトップとなり、全体の3社に1社を占めた。以下、2位は「大阪府」(13社、構成比11.8%)、3 位は「茨城県」(8社、同7.3%)、4位は「兵庫県」(7社、同6.4%)が続いており、全体では25都道府県に存在していることが分かった。(編集担当:慶尾六郎)

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